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High School

「なあ、ジョージ。いつまでこうしていられるのだろうか」
 俺は、緑色のビール瓶に止まっている、羽の折れたトンボに話しかけてみた。そのトンボの名前がジョージかどうかはもちろん誰にも分かる筈もなく、俺が名前を呼びたかったから便宜上名付けたに過ぎないのだが、名前を付けたトンボへ急に愛着のようなものが湧いてきて、折れた羽も尻尾の縞模様も六本の足も複眼も、刃物を腹に突き立てたら溢れ出てくるであろう液体も、それを包む薄い紙のような薄茶の筋肉も愛しいものへと変わっていた。
 まだ汗ばむ午後の陽気に俺の喉はビールを欲していたが、そこにジョージがいるのでビールを口に運ぶようなことはしない。仕方ないので乾いたハムを口に運ぶ。周りの皮が硬くなり、噛み切りにくくなっていたが、そのせいか唾液が多量に分泌されて少し喉が潤ったように感じた。
 尻が痛いな、と思ったが部屋からクッションを持ってくるのも面倒なので少し座り直しもう一枚ハムを口に運んだ。
 俺が今座っているベランダに置いてある木の椅子からは、この街を囲む山が見渡せる。山は緑色であるが、その緑色はビール瓶の緑のように単純なものではない。そもそも緑色一色でもなく、黄色や茶色もそこには混ぜっており、知識のない俺は黄色や茶色と表現しているがその実、それらにも種類があるわけで、その色を表現するパターンは方程式で計算できるようなものではないのである。そこに膨大な種類の緑と称される色が混じり合い、山というものの色が形成されているのだ。そして、葉は風で落ち、虫たちは動き回り、鳥たちが巣を作り、リスは実を集める。つまり、俺がこうして観察している間にも山は変化を続けており、同じ山を見続けることは一生叶わないのである。
「なあ、ジョージ。いつまでこうしていられるのだろうか」
 俺は自問するようにもう一度ジョージに尋ねた。よく観察するとジョージは六本の足を僅かではあるが、動かしていることに気がついた。もしかしたらこれがジョージの答えなのかもしれない。
「ジョージ、俺ビール飲みたいんだ」
 俺は指を出して、ジョージを指に止まるように誘導した。意外にもすんなりジョージは俺の指に止まってくれた。少し尖った足が指に軽い痛みを与えるが、なんだかそれすらも愛おしく感じられる。そのまま指を下ろして、ジョージを机の上へと移動させた。
 羽が折れているから飛ぶことが難儀なのかもしれない。トンボの生態に関して俺は詳しくないが、小さいハエや羽虫を餌に生きているのではなかっただろうか。これからジョージは生きていくことが出来るのだろうか。そもそも、羽は治癒されるのか。人間には病院もドラッグストアもあるし、絆創膏も包帯もマキロンもある。哺乳類の自然治癒力についてはなんとなく理解があるが、昆虫の自然治癒力については聞いたことがない。これまでの人生で俺にとって、トンボや昆虫はその程度の生き物でこのままジョージが飛び立ってしまえばまた、そうなってしまうだろう。
 ぬるくなったビールを口に運び、俺はやっと喉を潤した。硬いハムも口に入れて、もう一度ビールを口に含み流し込んだ。
「あ」
 つい情けない声が出てしまったが、ジョージが机の上から羽を広げて飛び立っていた。ベランダの柵まで行き、ジョージの行方を見届ける。すぐにでも地面に落ちてしまい、コンクリートの駐車場に打ち付けられてしまうのではないかと思ったが、俺の予想は裏切られた。おぼつかない動きで、だが力強くジョージは緑の山へ向かい飛んでいるように見えた。
 ジョージも山のことを考えていたのかもしれない。緑色の瓶の上で、緑色の山に思いを馳せていたのかもしれない。
 結局ジョージは何という種類のトンボだったのだろうか。俺はオニヤンマとアカトンボくらいしかトンボを知らない。いつか気が向いたらトンボの種類についても調べてみようと思ったのだった。
 ビールの瓶を口に運ぶといつの間にか中身は空になっていた。仕方ない。俺は冷えたビールとクッションと、ローストチキンでも持って来ようと部屋に戻ることにした。

フジロックやってますねえ〜。ここ数年コロナの影響とかもあってマイナスなイメージもあるフェスだけれど、ここまでインディーやオルタナ出身バンド向けのフェスって無いよね。

まあ、運営側がそもそも左っぽくてそれを曲解している人たちが騒いでいる感じが良くないのかなあ。どうでもよ。

私は個人的にアラバキの次に好きなフェスですね。

昼間に久しぶりにフジロックの中継でSHERBETS観られたので、一曲。

まあ、キラーチューンだよね。
割とゆったり目のオシャレな曲が多い中でバリバリのギターリフがかっこいいロックンロール。

また観にいきたいなあ、SHERBETS。


今日は久しぶりにコークハイなんか飲んでます。
ジムビームをペプシで割ってね、サントリーさんありがとう。

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