思い出の上書き保存
誰にでも、苦い思い出と共に避けたい場所がある。
私の場合は、もっぱら別れた恋人や過去に色々あった男性が関係する場所である。
二人で訪れた場所や勤め先、会話に出てきた場所などだ。
近くを通ったり、話題にその場所がでてくると一瞬で過去にタイムスリップし体が強張ってしまう。
だから、そんな場所はできるだけ避けてきた。出会いと別れの数を重ねるごとに苦い思い出と避けたい場所は増え、どんどん生きづらくなってしまった。
思い出したくない場所や避けて通りたい場所が増えていく人生は嫌だ。
そう思い、思い出をアップデートすることにした。
長期休みの際に、親しい友人と会う機会があったので、嫌な思い出の場所を巡るツアーに付き合ってもらった。
昔話やたわいもない話をしながら、歩き続上書きしていった。
完全に思い出が塗り替えられたわけではない。だが、今は友人と歩きながら飲んだカフェオレの味や歩幅を合わせて歩いた道も同時に思い出される。
「マチネの終わりに」という小説で主人公はこんな言葉を残している。「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えている。変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。過去は、それくらい繊細でかんじやすいものじゃないですか?」
過去の記憶は繊細に感じやすいものである。だが、変えられる。歩みが続く限り、塗り替えることはできるのだ。
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