包丁

今使っているのは義母の物。洋包丁というのか、ステンレス製で刃に穴が空いている。チーズや胡瓜など切った時に、刃にくっつかないようにするための穴だと思うが、チーズも胡瓜もピッタリ貼り付く。

30年前に義母が亡くなり、台所用品は殆ど譲り受けた。私が買った包丁など、おままごとセットのような代物だったから、義母のこの穴開き包丁はとても便利だった。
その包丁も、次第に切れ味が鈍化してきて、専用シャープナーで研いでも切れなくなってきた。

この数年、何度も買い替えようと思うのだけど、ネットで見るそれらはどれも立派で、光ってて、そしてお高い。
切れない包丁は危険だけど、毎日のお惣菜を作るのには事欠かないしなぁと思い直す。

第一、新しい包丁が来たら、この包丁はどうするの?棄てるの?きっと棄てるんだよね。
そういう棄てることが苦手である。

短い間しか一緒に居られなかったお義母さんの台所用品は、どれも頑丈で手に優しい。
またネットを徘徊しながら、きっと今日も私は包丁を研ぐんだ。