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小さな節約小さな満足_洋服編

『縫い断つ人』という中谷美紀さん主演の映画をご覧になっただろうか。
主人公の女性は裁縫士(というのかな)。祖母がデザインし、縫った服を直すことに生きがいを感じていたが、徐々に自分自身のデザインも創っていこうと歩き始める。丁寧な縫製技術がとても印象的だった。

あそこまでとはいかないが、気に入った服は手入れをしながら、直しながら着続けている。20年選手30年選手も居る。

そのまま大切に手入れをしながら30年着ている服がある。

2023年2月

↑のワンピースはローラアシュレイのもの。素材は絹とシルクでシャリ感があり、ちょっとベトナムチックで、そのまま着ても、下にパンツをはいてもよく映えた。この写真はつい先日、シドニーのオペラハウスに着ていったもの。
今から30年前に友人と同じくシドニーを訪れたとき、このワンピースを着ている!

このワンピースは着てすぐに自分でクリーニングをしてアイロンをかけておけば、いつでも着れる。手入れも簡単でとても重宝。娘も狙っている。

一方、お直しをしながら着る場合は、信頼できるお直しやさんを見つけることが大切。一度この人と思ったら、その人のアドバイスは素直に聞く。幸い私はそういう方がいるお直しの店舗が近くにあり、さらにもう一人、裁縫の得意な頼れる友人、「たかこさん」がいる。

たかこさんはすごい。

ダッフルコート
娘が小学校高学年のときにノーブランドのフランス製のショートダッフルコートを買った。ふらっと立ち寄ったセレクトショップで23,000円だった。少し変わった色合いのコートで、娘は気に入ってそれこそ小・中・高と仇のように着て、高校を卒業するころにはダッフルの部分がボロボロになってしまった。コート自体はどこも悪くないのに。


あきらめきれず、たかこさんに相談した。たかこさんはダッフル部を1つ100円で買ってきて、縄の部分も一緒に付け替えてくれたのだ!すごい!

きれいになったダッフル


このコートは今は私の愛用品である。

セーター
ジョン・スメドレーのメリノウールの薄いセーターが好きなのだが、出番の多い黒のカーディガンを洗った時に袖にハンガーの先が引っ掛かり、穴が開いてしまった。ショック!
たかこさんに相談すると、刺繍糸で綺麗にかがってくれた。「黒だからあまり目立たないけど、ちょっと盛り上がっちゃった。」

ぜんぜん平気です!!!!

Y’sのブラウス
大学時代にYoji Yamamotoのショップで襟と袖にチュールのついた白いブラウスを買った。その時で45,000円くらいした。当時、一大決心である。何度も何度もお店に見に行って、どうしてもあきらめきれずに買った。

そのブラウスを30年経った今もまだ着ているのである。ただ、さすがに襟のチュールの部分が傷んで、穴が開いてしまった。

たかこさんに相談した。
なんと彼女は新しいチュールを買い、前のものと取り換えてくれたのだ!!!!!
すごい!すごい!感動した。肌触りのいい2枚仕立ての綿ブラウスは夏に大活躍する。このチュールで華やかになる。よみがえったときは本当に嬉しかった。

持つべきものは裁縫の上手い友人!本当にありがとう、たかこさん!
感謝しています。

もう一人、近くのお直し店舗に相談できる頼もしい裁縫士さん(なんて言うんだろうね、この職業)がいる。お直し料込みで服の値段を考えることができるのだ。たとえば.…

麻のワイドパンツ

ベトナムに行ったとき、夏の終わりで裏がちゃんとついた麻のパンツがなんと日本円で3,000円ほどだった。ただしウエストが大きい。多分90センチくらいはあったね。それでも素材や色や、縫製が気に入り、買ってきた。その裁縫士さんに早速相談したところ、これはいい買い物をしたわね、と20センチほど詰めてくれた。3,000円かかったが、結局6,000円で買ったことになる。

ウェストを詰めてくれた後のパンツ


これには後日談があり、それでもまだ大きかったので、翌年、もう一回持っていった。「直してもらったけど、まだ大きかった。もう少し詰めてほしい」とお願いしたら、「やっぱりね、あのときもちょっと大きいんじゃないかと思ってたのよ。聞いたよね、大丈夫って?(はい。ごめんなさい)これ、お直しのお直しでやってあげるから、1,000円でいいわ」と言われた!!!!
結局7,000円で上質の麻のパンツを手に入れたことになる。これは夏には私の大切なワードロープ。洗濯も自分でしても大丈夫。

黒のサッカー地のパンツ

サンディエゴで買った水着の上に着るとちょうどいいようなリゾート地向きの薄い黒のサッカー地のパンツを持ち込んだ。裾がとても広い。ちょっと見はロングスカートのように見える。ウエストはゴムだが、アメリカサイズで足が長く、168センチの私の身長でも引きずってしまう。7センチほど切ってほしいというと、「それはいいんだけど、裾のこのステッチが、うちではできないから、工場での作業になって、そうすると8,000円かかるのよ」という。サンディエゴのビーチハウスで(それもバーゲンで)1,000円で買ったパンツである。8,000円!絶句していたら、「他でも聞いてみたら?もう少し安いところあるかもしれないから」と言う。2件回ったが、結局同じくらいの値段だった。
最初の店舗に持ち込むと、その方は戻ってくるとわかっていたのか、対応を考えていてくれたらしい。「考えてたんだけど、このステッチじゃなくてもよくない?これ、素敵だけどね。普通のステッチにする?それなら4,000円」という。乗った!

結局普通のステッチに

結局このパンツは購入単価と合わせて5,000円となった。
本当に好きなものを買ったのだから、買ったものには責任をもって接したい。
うちの服は最後はウェスになる。いろんな大きさに切って、缶に入れておき、キッチンで、拭き掃除で、活躍させて、最後に「ありがとう…」と言っておさめる。

最後はウェスに


娘は自分用のスーツは要らないという。
「ママいっぱい持ってるじゃん。ママのスーツで十分。パンツの長さを詰めて(娘の方が身長が低い)着るから全部ちょうだい!」という。確かにコロナ蔓延以降、スーツを着て出かけることがなくなってしまった。私はOld Englandの11号のスーツが上も下もサイズがぴったりで、直しなしで着れる。昔はバーゲンのたびに丸の内のフラグショップに出かけてスーツを買っていた。その頃はよく着る機会もあった。もう15年くらい新しいスーツを買っていない。仕事で着る機会がなくなってしまったから。会議はオンラインだもんね。
それに着る機会がない、という以前に、なんとなくスーツをパシっと着る!という気概がなくなってしまったような気がする。歳とったからかなあ。
もうひとつ、フランス人の友達に、私が着ているようなスーツはフランスでは銀行員しか着ないよ!と言われたことも引っ掛かっている。私は、元、銀行員だけど。
夏、冬1つずつ残して、来年就職する娘に全部、お直しして渡すとしよう。きっと大切に着てくれるにちがいない。

服ではないが、私は手袋も好きでよくはめる。冬は革の、夏はレースのを。
革手袋は手にぴったり合ったのを買う。中がカシミヤかシルクのものを選ぶ。ドイツに住んでいた時に2つ手袋を買った。鮮やかなオレンジと黒の手袋。これは日本に戻って来てからも本当によくはめた。
普段に使っていたオレンジの方は、1年に1度クリーニングに出していたのだが、だんだん縫い目がほつれてきて、革も硬くなってきた。
面白いのは、クリーニングに出した後、ほつれがなくなっていることに気づいた。クリーニングやさんから外注で頼んでいる手袋専門のクリーニング業者の人が縫ってくれたらしい。もう駄目かなと思っていただけにとても嬉しかった。
そんなある日、会社の上司から電話があった。「君さ、手袋落としてない?ある?あのオレンジの」はっとして探したがない。「ないです!」「やっぱり。落ちてたんだよね~なんかみすぼらしくて誰も手に取ってなかったけど見覚えがあったから。ちょっと待って。拾ってくるから」
ということで、またおうちに戻ってきたオレンジの手袋、そのあと2年ほどはめていたがとうとう革が劣化してボロボロになり、泣く泣く処分した。

もう一つの黒の方にも面白い話がある。片方だけ落してしまったのだ。電車だ!と思い、忘れ物相談へ。落とした日はわかっていたし、のっていた路線もわかっていたが、すでに警察に渡されてしまっていた。水道橋の警察の落とし物センターに行く。日付と電車を伝えたら、なんと!あった!!!!!かわいそうに、寂しかったよね。うちに持って帰ってすぐにクリーニングに出してあげた。その子はその後もかなり頑張ってくれたが、やはり革がボロボロになり、とうとう処分した。

今はDENTSというイギリスの手袋メーカーのものを使っている。外が茶色で中がオレンジのカシミア。とても暖かい。とても気に入っている。あと10年くらいはもちそう。

夏の手袋にも面白い話がある。
私は手の甲の日焼けを避けるため、いつもレースの手袋をしているのだが、それを見ていたドイツ人の友人が自分のために縫ったブラウスの残り布で、手袋を縫ってくれた。「一番手の小さな友達にはめてもらってサイズ確認したけど、まだちょっと大きいかも」という。はめてみたらぴったりだった。

Monikaの作ってくれた手袋

とても素敵。よく見ると丁寧に作られている。今、たかこさんに声をかけて、この手袋を再現して夏の手袋を作れないかと相談している。

うちの祖母は洋裁が上手で、私が小さいころはいつも祖母が縫ってくれた服を着ていた。シュミーズと言われる下着も祖母が作ってくれていた。
今、そんな普通の綿素材の下着が手軽に手に入らないことが悲しい。あったとしてもすごく高い。
夏は綿や麻のものを、冬はウールやカシミアのものを選んで着て、傷んできたら直して着る。どうしてもだめになったら「ありがとう」と声をかけておさめる。
そんな風に服と接していきたい。
そしてそれを娘に伝えていきたい。

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