陰キャ非モテの私が女装して発展場に行った話#06

彼の名前はキョウ、一緒にいた女装子はナツメと名乗った。
もちろん本名のはずはない。
私もエリカと名乗り雑談に興じた。
コミュニティスペースは飲食ができ、ナツメは先ほどからレモンサワーをあおっている。
私は女装子として話すのも他の女装子と話すのも初めてだった。
女装子ならではの赤裸々な体験談でも聞けるのかと思ったが意外とその手の話は少なかった。
時事ネタ、ミリタリー、バイクなど会話の内容は男同士のそれとそう変わらない。
むしろ女装子は女装以外の趣味は男っぽいのではないかと感じた。

発展場である以上、「発展」についても当然話題に上がる。
私は今日が初めてでまだ及び腰であることを話した。
キョウのほうから誘ってくることはなかった。
もしかすると最初から会話が目的だったのかもしれない。
そういう人もいるところなのだ。
ナツメはかわいい男が好みのようだ。
年は私よりも下であったがそちらの経験は豊富のようである。

私達が会話に興じている間、コミュニティスペースには代わる代わる人か行き来している。
女性と区別がつかないレベルの人や、かなり際どい服装の人。
こちらを見ている男性もいたが私達が会話中のためそのまま去って行った。

夜が更けてきた。
キョウは終電のため途中で帰って行った。
私とナツメはここで夜を明かすつもりだ。
女装子同士での発展もよくある事でそれを目的とする女装子を多い。
どちらかというと私もそっちのタイプであるがナツメからのお誘いはなかった。
初めての私に気を遣ったのか単にタイプではなかったのか。

ナツメはすでにどこかで飲んできたのか、それとも単に酒に弱いのか、だんだんと酔いが回りふらつき始めた。
今日はもうこの辺にしよう。
二人でコミュニティスペースを後にしようとした時、小柄な男性とすれ違った。
ナツメは振り返り彼を視線で追った。
どうやらお眼鏡にかなったらしい。
ニヤリとほくそ笑むと私のことなど気にも止めず彼の後を追いかけた。
彼女と彼の夜はまだまだ続きそうだ。

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