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夜の冒険はワクワクする

毎晩、4歳の息子に本を読んでいる。毎週末、図書館に行って本を借りてくるのだ。

先週借りてきた本で、私が一番気に入ったのは「ぼうけんにいこうよ、ムーミントロール」である。あらすじは以下のような感じ。

朝、天気がいいので「今日は冒険日和だ!」と思い立ったムーミン。みんなも大賛成。各々に準備を始めるも、準備に時間がかかりすぎて夜になってしまった。けれど、ムーミンママが「月夜の冒険もいいわね」と提案し、夜の冒険に出発する。

出かける準備ってなかなか大変だ。「あれは持ったかな?」「あれも持っていきたいな」と思っていたらどんどん時間は過ぎていく。間に合いそうにないと思ったり、きっと忘れそうだと思ったら前日から準備しておかないと心配になる。私はそういう性質だ。

だから、朝思いたってお出かけするとなったら大変。出かける時間を決めたら、その時間までに頑張って用意する。私がバタバタしているときに限って息子が「ねぇねぇ。遊ぼうよ」とか言ってくるのでこちらもイライラしてしまう。「今、時間ないからあとでね」と言ってなんとかなだめる。

そんな私とは対照的なのがムーミンママ。お出かけ準備が夜になったとしてもまったく焦ることなく、「いいじゃないの、夜のお出かけ」なんて提案してのけるのだ。

確かに、夜のお出かけってワクワクする。

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私が小学生の頃の話だ。両親は同じ会社に勤めていた。夏休みなどの連休前には社員とその子供たちが一堂に集まり、みんなでご飯を食べに行くというのが恒例だった。

ある年の夏のこと。みんなは休みの間のおでかけ計画を言い合っていた。「田舎のおばあちゃん家に遊びに行く」とか「ディズニーランドに行く」とか。私には休みの間のお出かけ計画がなにもなかった。羨ましいなぁと思いながらみんなの話を聞いていた。

帰りの車の中で「ねぇ、まいちゃんはディズニーランドに行くんだってよ」と父と母に話した。「うちはどこにも行かないんだよね」と。

すると父が急に「じゃあ、今から東京行くか」と言い出した。夜ご飯を食べての帰り道なのでもう遅い時間だ。母が「何言ってるの」と怪訝な顔をする。

「ここから高速のればいけるぞ。朝になったら東京だ」父が本気だったのかどうかはわからない。車を運転していたので、顔は見えなかった。

私の気持ちは一瞬にして華やいだ。今から?こんな遅い時間からおでかけなんて。突然降ってきた”お出かけ計画”。こんなに楽しいことはない。前々から計画して出かけるのももちろん嬉しいが、思いつきで出かけるなんてワクワクするじゃないか。

夜のおでかけ、というのも良い。夜、車で走っていると道路の照明がビュンビュン遠ざかっていく。それを見るのも好きだった。

結局、母が「なにも用意してないし無理よ」と言うので実現はしなかった。私だって「多分無理だろうな」と薄々気づいていたので、父に「本当にいいのか?」と聞かれたけれど「無理でしょ、行けないよ」と答えた。

とはいえ、父の計らいはとても嬉しかった。

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「だけど、もう、おひさまがしずんじゃったじゃないのさ」と、ちびのミイがいうと、ムーミンママがこたえました。
「ほんとねえ。でも、いいじゃないの。つきよのぼうけんってことにしましょう」
みんなはうれしくなって、わあっとこえをあげました。

父やムーミンママのように大胆なことは私にはできないが、ワクワクする気持ちは忘れたくないなぁと思った。

子どもたちがもう少し大きくなったら、サプライズでなにか計画するもの面白いかもしれない。


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