#連想する街

『…犯人は…甘野さん！…あなたです！！』

『…ええっ！』

今日もまた、この名探偵による推理ショーがはじまる。

『…な…ふざけるな！…言っていい事と、
悪い事があるじゃないか！』

『…君は、本当に彼が犯人であると考えているのかい？』

『…ええ…間違いありません！…まっ、聴いていて下さい。』

『…。』

『…フフフ…いいですか？…まず、被害者の手には、
食べかけのバナナが握られていた…。これこそがすなわち、
死者からのメッセージ…ダイイング・メッセージなんですよ！』

『…ダイイング・メッセージ…。』

…ザワザワ…。

『…そう…食べかけのバナナ…つまり…バナナ…。』

『…。』

『…バナナといえば…皆さんは一体、何を思い浮かべますか？』

『…何が言いたいんだ、君は？』

『…バナナといえば…黄色ですよ。』

『…黄色だと？…。』

『…バナナといえば…黄色…この要領で、
言葉の意味を連想し、繋げてみるんですよ。』

『…。』

『…黄色といえば、ミカンです。…そして、ミカンといえば…
…甘い…もう、わかったでしょう…？
…そう…つまり…甘野さん！…このダイイング・メッセージは…
…あなたの名字を示していたんですよ…』

『…な、何だって！』

…ザワザワ…。

『…ま、まさか…。』

『…甘野さん…あなたは、被害者と口論となり…
…思いがけず、彼を殺害してしまった！…違いますか！！』

『…何を…ふざけるな！…私は犯人ではない！』

『…まだ、続けますか？…甘いといえば…野いちご…。
…ほらね…甘い野いちご…甘野…いかかですか？』

『…決まりだな…話は署でじっくりと聞いてやる…。
…さぁ…たっぷりと、しぼってやるからな…。』

陰険な顔つきの男は、ニヤリと笑った。

『…そ、そんな！…誰か…誰か、助けてくれ！…。』

『…さぁ…行こうか…。』