意味不明な羅列②

 「こちらです」
 黒スーツの示す先には町田教授の控室があった。
彼がドアを開けて中に入るよう促す。
 「失礼しま…」
 瞬間、爆発的な情報が頭に入ってきた。宇宙の誕生から、今後数億年の技術革新と破滅。人類の滅亡と再誕。繰り返す歴史になすすべもなく、人類の叡智はわずか数万年でチリと化し、愚かな原住民によって破壊されるものなのだ。果てなく続く恐怖の歴史を断ち切ることができるかもしれないが、できないかもしれない。できるできないで考えているうちは、人類の恒久的な成長は見込めないかもしれんからな。」
 はっと我にかえる。
 「今のは?」
 「失礼、私の思考を展開する装置の影響を受けてしまったのだろう。いやなに、これを慣れない人が多くて嫌になるね。普段から思考を鍛えておかんといかんよ君。とはいえ君は意識の再覚醒が早いし、飲み込まれることもなかった。やはり私の目に狂いはなかったね。」
 町田教授は一息に話した。驚くほど早かったが、不思議と理解できた。
 「おや、私の表層意識とリンクしたかな?それとも、君の意識との類似性が高かったか?それは後で調べるとして。はじめまして私があの町田教授だ。ぜひ町田教授とよんでくれたまえよ。がっはっは。」
 とってつけたような笑いが気になるが、話を進める。
 「先ほどのアレ…思考リンクとでも言えばいいのでしょうか?その影響でなんとなく話が分かってはいるのですが、改めて説明していただきたいです。なぜ我々を?」
 「うーん。なぜと言われれば困るが、まあ平たく言えば直感だよ直感。私ぐらいになれば直感で技術革新の一つや二つ起こせるものさ。その直感が言うのだから間違いないね、ああここに君達を呼んだのは他でもない、実験に付き合ってほしいんだ。僕が人類を、いや宇宙を見限らないための実験さ。そうとも僕は生まれて5年ほどで地球上の学問の触りはマスターしてしまった。そこからさらに10年で人類の遺したすべての叡智を解き明かしてさらに2年でその全てを昇華させるに至った。その僕が長い時間をかけて宇宙や人類が存在する意味を問い続けているが、なかなか答えが出ない。いや答えは出ていても踏ん切りがつかないのか?まあどうでもいいが、最終決定権は私には与えられていないようだ。神の如き叡智を手にしようとも、この手に世界を破壊する爆弾のスイッチは握らせてもらえないらしい。そこで私は直感を頼ることにした。ああ話が長いって、?まあ我慢して聞きなさいな。そんでもって直感のおもむくまま君たちを呼んだのさ。どうやら君たちが爆弾のスイッチを持っているようなのだ。えーあーうんこんがらがってきた。
・押し止められない憎悪が宇宙から分子レベルで放出された。光の何億倍もの速さで全宇宙に降り注ぎ、宇宙の外側にさえ満ち出した。
・何者かが意図的に起こした現象だと世界で僕だけが気づいた。いや、気づくように教えられた。
・僕にそれを教えたソレは、憎悪を放つものとは違う存在のようだ。これは直感だ。
・彼は爆弾をセットした。だが爆弾を起爆する権利は与えられていないようだ。僕と同じようにね
・爆弾は僕の直感によると二つのスイッチで制御されている。それは人間の深層に組み込まれている。人間を選んだのは外界の気まぐれらしい
・僕は叡智を結集して人類の意識を観察、記録することを義務付けられている。だからこその人類統合システムだし、その結果としてもたらされるのはスイッチの発見だ。スイッチが見つかるのはここ1年の間だった。僕は直感でそれを予期し、爆弾の場所の当てをつけた。そして君たちがここに来るように仕向けた。
・疲れたのでやめます。」
(ということだ)
 人類統合システムの個人通知がなる。僕らは全てを理解した。

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