【読書】三島由紀夫「宴のあと」

三島由紀夫の宴のあとという本を読んだ。面白かった。都知事候補の野口とその妻かづが都知事選を勝ち抜こと互いに奮闘する物語であるが、真っ当な手段で勝ちに行こうとするものの政治の世界の泥沼流的な手法を用いないためにいまいちインパクトに欠ける野口と、政治的な実績はないものの政治家が通うような名店の女将としてたくましく切り盛りしていくうちに培ってきた金銭力や演説力を用いあの手この手で夫を都知事に担ぎ上げようとする妻かづの対比が興味深かった。

感想としては2つあって、1つ目は政治はカネという色が強く描かれているなということである。妻のかづは自分の店を担保にしてお金を借り、その資金力を持って選挙活動を進めていくが、個人の資金には限界があり、対抗馬の政党(保守党)の資金には及ばず、次第に苦戦を強いられる。やはり政治は資金力・組織力なのかと思わされた。この書籍は50年以上前の本であるが、いまの政治で同じようなことがあっても驚きはしない。

もう1つは、人気のない人に応援されると却って逆効果になるということである。途中で妻のかづは悪い噂を流されてしまい、応援演説をすればするほど聴衆から変な目で見られるということとなる。かと言って候補人の妻としてじっとしているわけにはいかず、なかなか大変だったのではないかと思う。政治の世界では与党と野党が常に対立しているが、鍵を握るのは頭の切れる議員ではなく、頭の悪い議員なのではないかと思われた。その意味で、何らかの集団が対立しているとき、どちらの集団がより人気を集めるかは、加点法ではなく減点法で決められることも多いのではないかと思った。

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