【読書】トーマス・ギロビッチ、リー・ロス 「その部屋のなかで最も賢い人: 洞察力を鍛えるための社会心理学」

トーマス・ギロビッチとリー・ロスによる、 「その部屋のなかで最も賢い人: 洞察力を鍛えるための社会心理学」を読んだ。一見ハウツー本でありながら、学術的な知見に基づいているようで面白かった。

この本のメインメッセージは、

人間には色々な考えのクセがあってそれによって間違った意思決定をしてしまうことがあるから、そのクセに自覚的になろう

ということだと思った。

第1章では、「客観的に見て◯◯」という人がいるけれども、実際、客観的なんてことはありえなくて、その人の主観が入ってしまっている、という話がされていた。

第2章では、人の考えを変えることは難しくても、ちょっとした状況を変えることで人の行動は変わるということが書かれていた。例えば、賛成or反対の二択の問題があったとして、「賛成の人は手を挙げてください」と言った場合には3分の1しか手を挙げなかった場合、「反対の人は手を挙げてください」と言った場合は3分の2が挙手すると思われるが、実際はそんなことはない。わざわざ手を挙げるという行動をするのが面倒なので、手を挙げる人は少なくなってしまうのである。このことは、予めチェックが入っているメルマガ配信許可伺いにも現れている。

第3章では、ネーミングの重要性が述べられていた。あるゲームについて「コミュニティゲーム」と言うときと、「ウォールストリートゲーム」というときでは、前者の方が協力率が高いようである。法案で使えそうである。

第4章では、行動の重要性が述べられていた。人は感情が行動に先立つと思いがちであるが、行動をとっているうちに感情が生まれてくることもある。たとえば、パワーポーズをとっているうちに、権力があるように思えてくると言った具合である。なるほどという思いと、本当かという思いが同居する章であった。

第5章では、確証バイアスについて述べられていた。自民党反対と思っている人は自民党にとって都合の悪いニュースばかりが目に入る一方、自民党酸性と思っている人は自民党にとって都合の良いニュースばかりが目に入るということだろう。

第6章では、何が幸せをもたらすかについて述べられていた。モノを買うよりも、経験を買うほうが幸せになるとのことである。CDよりライブのほうが良いということだろうか。なんとなく分かる気がする。

第7章では、どうすれば交渉がうまくいくかについて述べられていた。どうやら、同じ提案をしていた場合でも、譲歩した感を出すときのほうが、譲歩した感を出さないときよりも、その提案が受け入れられる可能性が高いようである。本当の譲歩なのか、譲歩したふりにすぎないのか。交渉するときは、気をつけねばならない。

第8章では、ステレオタイプについて述べられていた。数学が苦手というステレオタイプがあるカテゴリーの人について、それが数学のクイズと言われた場合と、単なるクイズと言われた場合とでは、前者のほうが成績が悪くなる、といった話だたったと思う。思い込みが実際に成績低下という形で現れるという事例だが、おそろしい話である。

ざっとまとめればこんな感じだが、たくさんの実験結果が引用されているので、まだまだ不十分。興味のある方は、ぜひご購入を。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?