【読書】中村高康「暴走する能力主義 ─教育と現代社会の病理」

 中村高康氏の「暴走する能力主義 ─教育と現代社会の病理」という本を読んだ。社会学の理論に依拠した記述も多く正確に理解できたかは怪しいが、採用したり評価したりするには能力とされるものを1つの物差しとして利用する必要があるが、そこで利用されるべく能力は時代や社会によって変動するという問題、さらにはどのような能力であれそれを測定するのは難しいという問題が存在しているというメッセージを受け取った。だからこそ、能力観への反省は常に行われているということであった。

 個人的に興味深かったのは、大学での教育に対する批判は大卒の人間によって行われがちという点である。大卒の人が高卒の人よりもたくさんお金をもらっているのだとすれば、大卒の人間は学歴という物差しから利益を得ていると考えることができる。そうであれば、むしろ利益が相対的に少ない高卒の人が既存の物差しへの批判を行うことが自然だと思われる。しかし、実際のところはそうではないらしい。その点に驚いた。

 大学に進学していない人は大学に対してどれだけクリティカルな批判を行っても「知らないくせに言うな」というリアクションが返ってくる。一方、大卒の人であればそのような批判が来ることはない。そうした違いが上記の不思議減少を引き起こしているのだろうか。

本題と異なるところで考えさせられる1冊であった。

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