【読書】隈研吾「くまの根: 隈研吾・東大最終講義 10の対話」

「くまの根」という本を読んだ。隈研吾の最終講義集、あるいは対談集である。自分が一方的に話すようなスタイルを好まないという点と、自分より若い人と話すよりも自分の先輩方と話すことの方が希少であるという2点から、人生の諸先輩方との対談が中心であった。なかでも内田祥哉先生は94歳で登壇して話して対談してということで驚いた。彼は対談から数年後に亡くなっているので、ここでの対話がいかに貴重であったかが分かる。

本作を読んで思ったのは、隈研吾が現場を大切にしているという点である。偉くなりプロジェクトが大きくなるにつれて、話す相手の役職はあがっていく。しかし、隈研吾が本当に話したいのは現場でものを作っている人であるようで、リーダーばかりと話さざるを得ない現状に不満そうなのが、素晴らしいと思った。

また、色が均一ではなく自然現象に伴うムラができた際に、それを自然的で美しいと思うという感想も良いなと思った。均一ではないので怒られると思ったようだが、こういう自然を受け入れる目を持っているというのが彼の良さであると思った。

10講義あるので、1講義90分として合計900分ぐらい分をまとめた1冊。それだけに少し長くて盛りだくさんだったが面白かった。

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