【読書】呉勝浩「道徳の時間」

「道徳の時間」という本を読んだ。左脳で書いたような1冊という印象を受けた。ミステリー小説は頭から書くのと同時に、結末(誰が犯人であるか)からも書くんじゃないかと思うので、その点は数学の証明問題や、将棋の中盤から終盤にかけてと似ているのではないかと思う。本作は伏線がいくつもあって匠に考え抜かれた1作だなと思うと同時に、筆者に踊らされているかのような(これは褒め言葉でもある?)気もした。踊らされて嬉しい筆者になれば評価できるのかもしれないが、自分がこの作者の本を読むのはおそらく初めてなのでまんまと踊らされたという感覚である。

いくつかのキーワードは炎上商法と道徳であろう。ジャーナリストとしての自分が事の真相を手繰っていくうちに見たくない現実が見えてきたらどうなるのだろうということを、本作の後半に差し掛かるにつれて考えさせられた。また映画監督(?)がいったい何者であるのかというのは謎であった、というか思わぬ展開で驚いた。

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