【読書】石田衣良「清く貧しく美しく」

「清く貧しく美しく」という本を読んだ。非正規雇用の男女カップルが慎ましくも幸せに過ごしているが、ある日男に非正規雇用から正規雇用へとステップアップするチャンスが降ってくる。正規雇用になることで得られるものと失うもの、そして2人の価値観のマッチング。現代を描いた小説で面白く読んでいたが、結末があまりにも自分の好みではなかった。以下、雑感。

・大学までは同級生として同じような階層にいた友人も就職後には階層の高い者と低い者とに分かれていく。そうした階層の違いが現れる場面が儀礼であり、とりわけ結婚式では服装、振る舞いなどの点で階層の違いが見え隠れする。男性は適当にスーツを着ておけばよいが、女性はドレスを着ることになるので高いドレスから低いドレスまで選択するのも大変である。さらに、結婚式に出席できる者はまだ一定以上の階層であると考えられ、本当に底辺の人は出席することさえもできない。そうした点がやや具体的に描かれていた点は好みであった。

・階層と関連する内容として、弱いからこそ他者に頼れないというものもあるのではないかと思う。自分が本当に貧しくなったとして、その現状を大学の同級生に伝え助けを求めることは自分のプライドを傷つけることとなる。本当に貧しい場合は他者に頼ったり結婚式に出席することが難しくなるため社会的にも孤独になっていくのではないかなと思った。

・エンディングは本当に好みではなかった。

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