【読書】ターリ・シャーロット「事実はなぜ人の意見を変えられないのか-説得力と影響力の科学」

「事実はなぜ人の意見を変えられないのか-説得力と影響力の科学」という本を読んだ。原題は「The Influential Mind: What the Brain Reveals About Our Power to Change Others」であり、邦題よりも説得力や影響力に重きが置かれている。

興味深かった知見はいくつかあるが、ここでは2つ取り上げる。

1つ目は、人に何かをさせたいときにどのようなメッセージが効果的であるかというトピックである。例えば人に筋トレをさせたいとして「ジムに行かないと太るよ」というネガティブなメッセージと、「ジムに行くとカッコよくなれるよ」というポジティブなメッセージであれば、後者の方が効果的であると述べられていた。言われれば納得であるが、実践できているかは微妙な所。邦題は「事実では変えられない」という点に注目しているが、本書の知見を踏まえれば「人の意見を変えるためにはこうすればよい」という点に注目したほうが良かったのではないかと思われた。

2つ目は、誰の意見を参考にするかということである。2020年はコロナウイルス感染症が世界的に流行していて大変な世の中だが、未知のウイルスだからこそ他者の意見を参考にする必要がある。では、誰の意見を参考にするか。もし専門家1人の意見と素人1人の意見のどちらを参考にするかと問われれば、当然専門家の意見を参考にするだろう。しかし、専門家1人と素人50人だったらどうなるか。専門家の方がよく知っているはずなのに、多くの人は数の力を重視して後者を重視してしまう。たしかに1人1人が独立に判断を行っていれば後者の方が正確にもなりうるが、それぞれが類似した情報を頼りに判断していれば後者の優位性は薄れてしまう。ツイッターなどで多くの意見を参考にできる時代、こうしたバイアスに自覚的になり誰の意見を参考にするかを決めていかなければならないと思った。

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