【読書】大林宣彦「キネマの玉手箱」

大林宣彦監督の「キネマの玉手箱」という本を読んだ。映画についての本であるものの、反戦に対する気持ちが強く伝わってきた。なかでも、最近になって日本でも戦前映画が撮られるようになってきているという言い回しは新鮮で、もはや戦後ではないという言葉の意味もそのうち変わってくるのかなと思うとゾッとする。

第1章は癌ステージ4宣告を受けたときのエピソードが書かれているが、死期が宣告されたのにこんなに楽観的でいられるのかと驚いた。楽観的であるが故に病気の進行も遅れるという信念を持っているので、楽観的→進行遅れる→さらに楽観的というポジティブなループがあるように思えた。

また、医者になろうと思っていたが本当は医者になりたいと思っていない自分に気がついて、映画監督になることにしたというエピソードは、山田太一作品の早春スケッチブックを思い出した。医者家系だから自分も医者になるという思考停止に陥るのではなく、自分が本当にやりたいことに素直に従ってきたからこそ、死ぬ間際まで映画監督という仕事をやり続けることができたのではないかと思う。

読みやすい1冊であった。

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