【映画】彼の見つめる先に

「彼の見つめる先に」という映画を拝見した。素晴らしい。盲目の主人公と彼を介助する2人の男女を中心としたストーリー。

今まで目の見えない人に対してはモノが見えないのだとばかり思っていたが、太陽が照っているかどうかが分からないので時間概念を分かることも難しいし、身体の動きを見ることができないのでダンスという概念を知ることも難しい。そういった難しさについての無知に気がつけたのは良かった。

とは言え、本作の主人公は少しずつ自らの概念を拡張していく。友人と一緒に映画を見に行き、分からない所を彼に質問することで見えない映画を一緒に楽しむことができる。勇気を出して身体を動かしてみることでダンスを楽しむことができる。あの映画見た?という質問を盲目の主人公にすることは1つのタブーかもしれないけれども、そうした突っ込んだやり取りが一切できないのも窮屈。信頼できる友人との関係性をきっかけに主人公のできることが拡張されていくのは見ごたえがあった。

ただ、思春期の彼らには仲違いするタイミングもありそれも描かれていた。その描き方が実に巧みだと思った。仲が悪くなり、普段主人公を助けているのに助けなくなるという行為、これはプラスの行為がゼロになるだけで特にマイナスの行為を行っているわけではない。そのため他者から責められるわけではないが、その行為をした(しなかった)ことを一番理解しているのは自分自身なので人知れず葛藤を抱えることとなる。本作はそうしたシーンが描かれており、この映画で1番気に入った。

全体を通して1時間30分ほどでサッと見れるが見ごたえがある。最後には思いがけない展開も。社会的にも問題になっていることが、誰でも経験があるような具体的なレベルで描かれている点、好みだった。見てよかった。

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