【読書】中村文則「R帝国」

「R帝国」という本を読んだ。左脳で書いたような1冊という印象で、現実社会の問題を小説という形で戯画化した1作であると思った。自分はもっと日常的なことが描かれた小説が好きなのであるが、本作は近未来の緊急事態が描かれた1作なのであまり面白いとは思えなかった。以下、若干のネタバレを含みます。

本作では全ての情報を管理する事実上の独裁政権に対して、一部の民衆が抵抗するさまが描かれる。結果、政権にとって都合の悪い情報を手に入れそれを撒き散らすことに成功するのだが、受け取った民衆はその情報を陰謀論として捉え、政権は依然として支持したままというストーリーであった。

最後の方で登場する、人間にとって大切なことは真実よりも半径5メートルの幸福というセリフが印象的であった。この1文は政権という自分から離れた場所における情報なんて一般市民は無関心であり、国民の幸せさえある程度担保しているように見せかければ好き勝手して問題ないということだと思った。

あとがきにてR帝国のRについて書かれているが、自分はRadiusとかRealとかかなと思ったら全然違うようで驚いた。エピローグを見ればRepeat感もあるが、それが本筋とは思わなかった。

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