【読書】綿野恵太「『差別はいけない』とみんないうけれど。」

綿野恵太氏の「『差別はいけない』とみんないうけれど。」という本を読んだ。差別をする人→「差別はいけない」という人→「『差別はいけない』という人」についての本を書く人(=著者)という構造になっており、非常にメタ的な視点に立っていると言える。自分はその本についての感想を書くので、また1つメタなレイヤーに立つことになるのだろう。

本書のタイトルが「みんないうけれど」で止まっている通り、だからどうすればよいのかという点での主張ははっきり言って明確ではなかった。人間は潜在レベルで差別的な意識を持っているという心理学の知見を挙げていたが、「差別はいけないと言うけれど、みんな内心では差別している」ということがメッセージなのであれば、何ら新しくない1冊であろう。

興味深かったのは、アイデンティティとシティズンシップの違いであるが、よく分からなかったのが正直なところである。女性だから平等に扱えという立場がアイデンティティで、その人の属性(性別など)にかかわらず平等に扱えという立場がシティズンシップであろうか。この点が分かれば、もっとこの本の良さを味わえたかもしれない。


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