【読書】米澤穂信「本と鍵の季節」

米澤穂信さんの小説「本と鍵の季節」を読んだ。高校生2人が主人公のミステリー小説である。主人公が高校生だからといって、学園モノの要素が強いわけではない。むしろ、主人公2人は大人びている。また、ミステリーだからといって重たい内容であるわけではない。短編ということもあり、すんなり読める。

自分が興味深く思った箇所は本筋とは異なるところである。それは、思い出話として語られる箇所にある。思い出の中で、主人公はある罪を犯した友人をみんなの前で糾弾してしまう。ここでの糾弾はもちろん正義感から行われたものである。しかし、そのことで父親から怒られてしまう。なぜならば、みんなの前で糾弾することで、糾弾された側はその場にいづらくなってしまうからだそうだ。良かれと思ってやったことが負の帰結を導きうる例として興味深かかった。

ちなみに、レッテルを貼ることで、レッテルを貼られた側は却って悪い行いをとるということが言われているはずである。それで言うと、みんなの前で糾弾することで、糾弾された側は今後悪いことをするということも十分ありえる。その意味で、主人公の父親の指摘は正しかったと言えるだろう。

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