【読書】エステル・デュフロ「 貧困と闘う知――教育、医療、金融、ガバナンス」

エステル・デュフロの本「貧困と闘う知」を読んだ。ちゃんと実験して、政策に効果があるかどうかを見極めましょうというメッセージであった。例えば給食費を無料にすることの影響を調べるためには、給食費を無料にされた学校とそうでない学校を比較して、前者の方が出席率や成績が高いという結果が出るかどうかを調べれば良い。これはシンプルな実験であるが、こうした地道な研究を実際に行うことは難しいことである。その点が評価されているのであろう。

なお、政策の影響を調べることのメリットは政権交代のときにも現れうる。例えば、民主党政権のときにある政策が実行されたものの、その翌年に自民党政権になったとする。民主党政権が続いていればその政策は継続されたと予想されるが、自民党政権になってその政策が継続されるかどうかは不透明である。実験によって政策の効果を定量化することは、こんなときに役立つ。

総じてクールヘッドで淡々と書かれた印象であるが、1つの実験を行うに至る苦労は計り知れない。謙虚な一冊という印象であった。

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