【読書】リチャード・ランガム「善と悪のパラドックス ーヒトの進化と〈自己家畜化〉の歴史」

「善と悪のパラドックス ーヒトの進化と〈自己家畜化〉の歴史」という本を読んだ。人間は他の動物と比べて日常的に喧嘩をしたり暴力を奮ったりするわけではないのに、どうして戦争ではかなり残虐をするのか。この矛盾について進化の観点から述べられた1冊であった。

著者はまず暴力を反応的な暴力と能動的な暴力の2つに分ける。

反応的な暴力とは、カッとなって暴力してしまったという種類の暴力であり人間は他の種と比べて反応的な暴力を抑制することができるようになったという。これが人間の善の部分の説明である。

一方、能動的な暴力とは誰かをやっつけるために計画立てて暴力を振るうという意味であり、人間はこの能動的な暴力については抑制しているわけではないという。これが人間の悪の部分の説明である。

では、なぜ人間の反応的な暴力は抑制されたのに、能動的な暴力は抑制されなかったのだろうか。それは、人間の集団の中で暴力的な者をやっつけるために、他の暴力的ではない者が協力して攻撃するという仕組みが生まれたためである(この点、誤読しているかも)。人間は暴力的なメンバーをやっつけるために能動的な暴力を磨きつつも、他のメンバーからやっつけられないために反応的な暴力を抑制したのだという。このサイクルによって善と悪のパラドックスが生まれたというのが本書の主張だと理解している。

ちょっと長かったが、このアイデアは初めて知ったので、得られるものも多かった。

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