【読書】クリス・ベイル「ソーシャルメディア・プリズム――SNSはなぜヒトを過激にするのか?」

「ソーシャルメディア・プリズム」という本を読んだ。お手本のような研究であると思った。というのは、数字の分析で物申すのみならず、インタビューを通じた質的分析も行っているからだ。その点、素晴らしいと思った。

ソーシャルメディアには特定の政党・人物を支持するのみならず、それらに反対する人に対して攻撃的なアクションを起こす人もいる。筆者いわく、関連するのはアイデンティティの問題であるという。自民党支持者というアイデンティティをオンライン上で築き上げ、自民党支持的な、あるいは反野党的な振る舞いをするうちに、どんどん自民党支持者からいいねを押してもらえるようになり、それが気持ちよくなってどんどん過激なアクションをオンラインで起こすようになっていくという主張、なるほどと思った。

あるアーティストのファンの人がそのアーティストの絵を書いていいねをもらうのと同じ感覚で、ある政党の支持者はその政党を支持する投稿をするのだろう。政治はアーティストと違って競争的な側面があるのでどんどん過激化するのが難しい問題。オフラインのコミュニティで十分承認されていれば、オンラインで攻撃的な振る舞いをすることもなくなると思ったが、楽観的すぎるだろうか。

自分がインスタグラムに投稿していいねをもらってちょっとうれしいのと同じ感覚で、彼らが過激な政治的投稿をしていると思えば、あまり距離を感じないようになった気がしないでもない。違うと思っていた人たちが実は自分と似た側面を持っていたということに気がつけたのが面白い。

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