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#74 二十歳/及川恵子

どんな夢をお持ちで?

専門学校のパンフレット制作に携わる機会があり、学生さんからたくさんの話を聞きました。

「私って、この子たちの倍の年数生きてるのかあ…」とぼんやり思いつつも、一人一人の話を聞いてみると、みんな同じように
「友人同士で支え合って、それぞれの夢のためにがんばっています」と教えてくれるのです。

わあ。

コロナ禍での学生生活だし、資格取得のための勉強も大変だろうし、
いまだに就職だってハードな世の中だと思うんですよ。

それでも、
「友達がいてくれるから頑張れる」
「先生たちがいつも助けてくれた」
「どれだけ勉強がつらくても夢のために諦めない」
「大学に行った人たちに負けてられない」

と、彼、彼女たちは私を見てまっすぐに言うんです。

わあああああ。

中年に差し掛かった大人がこういうことを言うのは本当に嫌らしいことだと思うのですが、
「今 の 子 た ち っ て 本 当 に 真 面 目  で し っ か り し て い る の ね 」

なんというか、土台が違うんだよね。
人間の進化ってこういうこと?
生まれた世代が違うと、人間ってこんなにもアップデートされた状態になるんですか?
って思っちゃったもんね。

そして、若者たちの煌びやかで華やかで明るい話を聞きながら感じたのは、「私はなんて怠惰な精神を持ってこれまで生きてきたんだ…」という多少の恥と、「私が二十歳の頃はどんな夢を持っていたんだっけ」ということ。

振り返ってみれば私の二十歳の頃は、母親が病に倒れた時期。すなわち、かなりの暗黒期。(以前も何度かここに書いたような気がしますが)
“青春を謳歌する”なんて言葉と真逆の、しかも田舎の港町で、腐ったように生きていました。
そんな時でも、なりたかったのは建築士です。
いろいろある中で、むしろそれを目指すことが意地になっていたかもしれません。
それでもなりたかった。なってみたかったんです。

ま、結局は建築士の資格をとったものの、まったく違った方向から建築に関わるようになるのですが。
それもそれで、「ああこんなところに着地したのか。割といい人生だな」と思います。

そんなこんなでいろいろ書いてきましたが、お二人は二十歳の頃の夢ってなんでした?
あの時どんな人生を思い描いていて、今、振り返って何を思います?

夢を振り返るなんてなんだかこっぱずかしいわ、って感じかもしれませんが、ちょっとだけ教えてください。

及川恵子