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#99 歌舞いていこうよ

【往復書簡 #99 のやりとり】
①(9/21):泖〈生き直すと決めた
②(9/23):くろさわかな〈戦化粧
③(9/26):及川恵子〈小さく仕込め、赤〉

小さく仕込め、赤

「歌舞く」という粋な行為に縁遠い人生だったと思います。
特に個性的な衣装を好んでいたわけでもなく、誰かが設えたかっこいいor かわいいものを選び取り、風変わりだの変わっているだの言われることのないこれまでだったな、と今、振り返っています。
服も、メイクも、インテリアもそう。
私は個性のない人間で、誰かの考える“いい”をなぞって生きてきましたし、きっとこれからもそうして生きていくのだと思います。
(そこに自分なりに多少のアレンジは加えれど、ね)

だからこそ、歌舞くという行為ができる人、歌舞いてるなと思える表現をしている人がとても好き。憧れます。
自分の見てきたもの、感じてきたものを、“普通”にとらわれることなく、ありのままに表現できる人ってすごい。素敵。私もそうでありたかったな。
ちなみに「傾奇者(歌舞伎者)」という言葉はナンバーガールで知ったんだよなあ、ということを今思い出したから書いておこう。

ただ、私がこっそり、ひっそり、陰ながら、自分が自分に小さく歌舞く瞬間がひとつだけあります。
マスクの下の唇に、赤を仕込む時です。

「ふふふ、誰も気づかないでしょう?私が今、マスクの下で赤いかっこいいリップをしていることを…!」
と、静かに自分しか知らない異質を楽しむ。
これが時に、心にいいんですよね。
しかも肌が白い私、赤いリップが似合う似合う。

自分で自分の歌舞く瞬間を愛でる。
私にはそれくらいがちょうどいいのかもしれません。