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#44 元気メシ/及川恵子

愛しの水煮肉片

イライラした時。
腹が立った時。
仕事がうまくいかない時。
元気がない時。

妙に辛い物が食べたくなります。

辛い物に逃げている、と言えるかもしれません。
だって辛い物を食べている時、ストレスは完全にどこかに吹っ飛びますからね。
(その後、体の中なのか脳の中なのか、どこかからかむくむくと膨れ上がってきた悩みのタネとまた向き合わないといけないのだけど)

辛い物の中でも特に好きな料理は「水煮肉片」です。
ご存知ですか? 水煮肉片。
「スイジューローペン」と読みます。
“水煮”だなんてあっさりした料理にふさわしい名のようですが、これです。

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写真は食べログから拝借。しかしまあ画力がすごいな…。

器いっぱいに盛られた激辛スープの中には片栗粉?をまぶして炒めたことでぷりぷりとした食感の豚肉とザク切りのキャベツが沈み(“沈んでいる”、という表現が本当にふわさしいんです)、その上には大量の唐辛子。
何度も見ているはずなのに、何この唐辛子の量。笑っちゃうんだけど。

しかし!
スープと合わせて豚肉とキャベツを食べることで辛さと甘さが相まって本当においしいのです…!
もちろん味わいは言うまでもなく唐辛子の辛さに脳天を突き抜かれてしまうのですが、食べ進めるうちに花山椒の爽やかな風味と豆板醤のコクがスープに広がり、気づけばクセになってしまいます。

辛いのに、止まらない。
「やめてやめないで」って感じ。

そして、普段は絶対にそんなことはしないのに、水煮肉片を目の前にした時だけは唐辛子をバリバリ食べられちゃうのもいいんですよね。
「今、なんだか自分はいけないことをしている」というある種の興奮と多幸感が味わえるのも、水煮肉片でしか感じられない特別で不思議な感覚です。私、大丈夫かな?

仙台では「成龍萬寿山」でいただける水煮肉片が最高においしいです!
会社員だった頃、一時期狂ったように食べに行っていたなあ。毎日が相当なストレスだったんでしょうね。

そして今、コロナウイルスの影響で外に出られずストレスが溜まると、私は自宅で水煮肉片をつくるようになりました。

つくったのがこちら。

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自分で言うのもなんですが、最高に美味です。
唐辛子と花椒にじっくりを火を通して油にその香りを移すと、本当においしく仕上がるんですよね。
刻んだニンニクとショウガを大量に使っているから水煮肉片を食べた翌日までは誰かに会うことはできないという難点はありますが。
まあそもそも私には友達が少ないからいいんですけど…。

ちなみについ先日、note内の個人的ページで「ハンバーグフライカレーを愛しすぎている女」というエッセイを書きました。
そちらではカレー。今回は水煮肉片。
料理のジャンルは違えど、どうやら私はつらい時にからい料理を“元気メシ”とする女に仕上がったようです。

及川恵子