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#59 踏み出せない/及川恵子

“韻踏合組合東北支部”的なものもいいかもしれない

「電子ピアノ買うわ」
「ウクレレはじめてみよ」
「またピアノ習いたいな」

これすべて、いまだに現実になっていません。
すぐ出来そうなのに、していない。
踏み出せていません。

ピアノを習い始めた7歳。
ブラスバンド部に入った9歳。
吹奏楽部に入った13歳。
叔父からギターをもらったものの、Fのコードに挫折した14歳。
そしてそれ以降延々と続く、「音楽は聴くに限るな…」という感覚。
そして35歳くらいの時にGO-DJを使って夜な夜なDJごっこをしたりしてね。
(懐かしいな、GO-DJ…)

そうやって形式も物理的な触れ合い方も変化させながら、小さい時から音楽に親しんできた私。
40にもなろうかというここ最近、不思議と「また楽器を演奏してみたい」という思いが湧き上がってきています。

しかし

楽器屋に行ってみても、
CASIOのキーボードのHPを眺めてみても、
「超初心者向け!」と謳われたお手頃価格のウクレレを見つけてみても、なぜか私の心は無のまま。少しも動かない。

「甥っ子と一緒にピアノを弾けたら楽しそうだな」
「ララランドのあの曲を弾いてみたい」

なんて、一歩踏み込む理由なら揃っているというのに。

それなのに動かない理由は何なのでしょう。
自分で自分がわからない。
何をビビっているのでしょう。
ウクレレなんて質を問わなければ、Amazonの「今すぐ買う」ボタンをクリックすれば済む話なのにね。

こうして私は40になり50になり、「あの時そういえば…」と思い出して死んでいくような気がします。

もういっそ特別なことに踏み出してみようかな。
40歳にして舞妓になるとか、お天気お姉さんになるとか、漁師になるとか。

ラッパーになるとか。

踏み出し甲斐がありそうですから。

及川恵子