#42 財布の紐がゆるむとき/及川恵子
私のかわい子ちゃんのために
ついつい散財してしまう自分が嫌いです。嫌いどころか、大嫌い。
CONVERSE SKATEBOARDINGの新作スニーカー。
NIKEの新しいトレーニングウェア。
BOBBI BROWNのリップ、NARSのアイシャドー、SUQQUのネイル。
お気に入りのショップの店頭に並び始めた雑貨、好きなブランドのかっこいい服のあれこれ。
藤井風の武道館ライブのBlu-rayディスク。
そして、「これ絶対おもしろいじゃん…」と直感が働いた本の数々。
気がついたら、自宅に届いていました。なんで?
そして、「またやらかした…!」と自己嫌悪。
理性が効かない、物欲が止まらない自分が大嫌いになります。
(いやでも藤井風のBlu-rayは買ってよかったけどさ)
こうして私の財布はすっからかんに。
手を振ることもせず静かに去っていく歴史の偉人たちをさみしく見つめる私。その手を放したのは私自身のはずなのにね。
とはいえ、こんな私でも確信と自信を持って財布の紐をゆるめる時があります。
それは、かわいいかわいい甥っ子のための買い物をする時。
甥っ子は今2歳半。
最近は恐竜に興味を覚え始め、
「ティラノサウルスはおっきいんだよ!」
「○○(自分の名前)はプテラノドンがすきぃーー」
などと私に教えてくれます。かわいい。
一度間違って「怪獣が好きなんだよね?」と私が言ったら
「かいじゅうじゃないよ!きょうりゅうだよ!!!」
と怒られたことすらありました。かわいいかわいい。
そんなに好きならとつい先日、甥っ子のためにIKEAで恐竜のぬいぐるみを買いました。
舌を出して愛らしい表情を見せる犬や、ふわふわとした手触りのまんまるいお腹がかわいいクマなど、思わずぎゅっと抱きしめたくなるIKEAのソフトトイシリーズの中で恐竜シリーズはなんだか異様。
唯一ブロントサウルスはくりくりとした愛らしい目をしているものの、他はみな、キリッとした目や鋭い歯、頑丈そうな鱗やキバを忠実に再現したようなものばかり。
小さな迫力があり、大人の私も少々たじろいでしまいます。
しかし、甥っ子にプレゼントしてみるとこれがまあ大興奮…!
「みどりのティラノサウルスだー!!!」とそのぬいぐるみを掴んではのっしのっしとフローリングを歩き、立ち止まったかと思ったら
「グワアアアアアーーー!!!」
と恐竜の物真似でひと鳴き。
だいぶ喜んでくれました。
それから、ティラノサウルスの首元を掴んで離さず、お風呂とご飯以外の時間はいつも一緒にいるそうです。
その一方で、それまで甥っ子が大事に大事に抱えていたアンパンマンのぬいぐるみはお役御免と相成りました。
ソファでぐったりと横たわるアンパンマンなんて見たくない…。
私がぬいぐるみを買ったことでこんな目に合わせてしまって、少々アンパンマンに悪いことをしてしまったなあと罪悪感はあるものの、きっと甥っ子の世界はこうしてどんどん刷新されていくんだろうなとも思います。
もちろん物を買い与えることが必ずしもいいことではない、と重々承知しています。むやみやたらに買い与えているわけでもないし、私の好みを押しつけるつもりもありません。
ただ、甥っ子が好きなものに対して、何かを買い与えることでその興味や世界が広がってくれるならおばさんいくらでもお手伝いしちゃうぞ〜、という感じ。
いつかモノに対して興味がなくなってしまったとしても、甥っ子のどこかで思い出や経験や感性として積み重なってくれていると思うので、彼の両親からはつながらない世界を見せてあげられたらなあと思っています。
この思いはエゴでしょうか。
ちなみに今一番欲しいものは完璧なボディです。
こればっかりはAmazonにも楽天にもZOZOTOWNにも売っていなくてよかった。
及川恵子