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それゆけ李白マン~中国街歩き詩選~

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#荊州

それゆけ李白マン~中国街歩き詩選~ 第44回 晴れた日は母なる長江(かわ)で洗濯を

(58)園内では古(いにしえ)の塔を取りまく鬱蒼とした樹々が聖なる時間を支配し、また降りそそぐ陽光がこれに乱反射して、複雑な明暗を生んでいた。小鳥のさえずりも聞こえる。外縁には、長江の堤防に沿って亭廊が造成されている。塔の見学を終えて、今度は長江を望もうかとそちらへ近づいていくと、亭廊のなかでは年の頃アラフィフとおぼしき男女数名が、古めかしいラジカセで軽快な音楽をかけてステップを踏んでいた。すぐ近くで、サックスを練習している若者もいる。みんな熱が入っている。空はどこまでも高く

それゆけ李白マン~中国街歩き詩選~ 第45回 北京ダックのうた2019

(61)まだ11時だが、そろそろお昼ご飯にしよう。万達(ワンダー)広場へふたたび。暑いなか数百米(メートル)うろうろして、やっとこさタクシーをつかまえる。北京西路を西へ進んで、ほどなく到着。昨日さんざっぱら、ひやかして歩いたので、もう店は決めてある。本日のご注文、北京烤鴨(ダック)一択である。日曜日とあって、昼前だというのに人出は多い。外には子供用の逆バンジー遊具が四カ所設置されていて、強力なゴム紐(ひも)を取り付けられた幼児が、ビヨーン、ビヨヨヨーン、とトランポリンマットの

それゆけ李白マン~中国街歩き詩選~ 第48回 陋巷と云うなかれ ─観音庵巷にて─

(64)日は天高くから光を注ぎ、裏道の南半分を陰、同じく北を陽となしていた。当然どこを歩いても、家々の洗濯物が北側いっぱいにひるがえっている。三義街を東に折れたその一帯は観音庵巷(グワンインアンシアン)という。リヤカー、オート三輪、バイク、自転車、植木、ひなたぼっこ用の椅子、パラボラアンテナ、モップ等々。他にも名状しがたい、さまざまな生活用品が道端に置かれていた。どのお宅も、玄関前が内庭のごとき構えである。また小さなブランコ風の遊具があったり、お風呂用おもちゃのヒヨコが洗濯物

それゆけ李白マン~中国街歩き詩選~ 第49回 城壁の上でぼくが妄想すること

(67)そのまま三義街(サンイージエ)を進んでいくと、荊州古城の大北門(もとの名は拱極門)が正面に見えてくる。城門の上には朝宗楼なる櫓(やぐら)が座し、これぞ実戦的ホンモノといった観がある。現在、古城の六つの門のうち、櫓が保存されているのは二カ所だけ。この大北門と、昨夕訪れた東門(旧寅賓門)である。思うに、城楼のすがたは地元民の生活風景越しに望むといっそう「雰囲気」が増す。此処(ここ)には黄色や桃色のカラフルな旗もなければ、大げさな提灯もない。見たところ、観光客の来訪がほとん