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w/Jo

恋とは、なんて軽率に落ちて、なんて儚く終わるものなのだろう。

私が最後に恋に落ちたのは、2年前。大学1年の夏だ。たまたま参加した大学のとあるプログラムで、彼と出会った。

笑顔が素敵で、優しくて、でもちょっと頼りないところがあって。そんなところすら可愛いと思えてしまうくらいの、いい男だった。ここでは仮に、その男を「ジョウ」とする。

ジョウとは違う大学に通っていたし、お互い住んでいる県も全く違った。でも、不思議と彼とはすぐに打ち解けた。

特別趣味が同じとか、そんなことは無かったけれど少しの共通点を見つけてはお互いに「私たち/俺たちすごく良く似てるね」と言い合った。そんな時間が、言葉が、とてつもなく楽しかったし嬉しかった。

住んでいるところが離れていることもあって、デートと言えるデートは数回しかしていない。

そんな男に私が恋をするに至ったのは、2年前の秋。雨の降る渋谷で、ジョウと、共通の男友達と3人で落ち合った。

いや、そもそもは、私は彼らとはその日の夜から会う予定だった。でも、男友達から「ジョウがエフにも来て欲しいって言ってるから来いよ」と電話がかかってきたのだ。それで急いで渋谷に向かい、彼らに少し早く会うことになった。

椿屋珈琲でチョコミントのパフェを食べて、他愛もない話をしたあとはプログラムで出会った仲間数人と酒を飲んだ。

ひと通り飲んで飲んで飲んだあと、終電が近くなった人が出てきた頃合に解散となった。

ジョウに「今日はどこに泊まるの?」と何気なく聞くと、「まだホテルとってないんだ」とのほほんと答えた。その時の私は、お酒のせいで頭が働いていなかったために「じゃあうちに来なよ」と言ってしまった。一人暮らしをしている、あのワンルームの部屋に、だ。

少し驚いた顔はしていたけど、すぐに「ありがとう助かる!」とジョウはのってきた。

家までの電車に揺られているうちに少し冷静さを取り戻した私は、今晩何をして(決して"ナニ"ではない)過ごそうか考えた。お弁当の具材作り、溜めていたドラマの消化…?なんとしてでも、なんとしてでも彼を早く寝かして、そんで私も早いとこ眠りにつきたい、ひとりで。

一人暮らしをしている女が、いくら男友達とは言え「オトコ」を家にあげるのは世間的に見たら後ろ指を指されることなのかもしれない。

性交渉をしたくないのならば、たぶん尚更。

ただ、よくある言葉かもしれないが私はジョウを「信じて」いた。

そして実際、全く何もなかった。

「朝まで、思い出話でも語ろうよ」という誘いに乗って、絶妙な距離を保ちながらワンルームのアパートの狭い部屋で、私たちは明け方までなんでもない話をし続けた。

ジョウは何度か「ほんとうにエフに会いたくて、忘れられちゃうのが怖くて会いに来たんだ」と言った。そんなクサいセリフ、使い回されてきたようなセリフすら、あの頃の、あの夜の私には有効だった

夜が明ける頃、ジョウが「○○祭りに来なよ、案内するよ」と言った。ジョウの住んでいる所は東京から少し遠いから、すぐに返事はできなかった。

ぶっちゃけ、行くつもりなんてなかった。
「まだ好きになってない、今なら引き返せる」そんなふうにも思っていた。

でも、彼を東京駅まで送ったあと、私は飛行機のチケットをとっていた。

その理由は多分、「彼に忘れられるのが怖かった」から。


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