好きなこと

私は朝が嫌いだ。褒められたことではないので声を大にして言えないが、朝は眠くて眠くてしょうがない。私は家事が嫌いだ。毎日継続して同じことに取り組むことが私にとっては大変なことで、気づけばシンクには洗い物の山、風呂場には洗濯物の山、床にはほこりと髪の毛の山なんてことがしょっちゅうある。そして、朝の家事が、好きだ。
 これは先週の土曜日の話。その日は珍しく六時というかなり早い時間に目が覚めた。我が家のキッチンとリビングは北東を向いていおり、窓ガラス越しに朝日が差し込んでいた。キッチンでは、シンクいっぱいの洗い物の山が待ち構えており、憂鬱な気持ちになりながらも、なんとかスポンジを手に取った。少しずつシンクの食器の山は小さくなり、代わりにカゴに食器がたまっていく。洗われた食器は水滴を帯び、キッチンに差し込む陽光を弾いていた。食器だけではない。キッチンには光を反射するものが多い。鉄製のコンロ、油の入ったボトル、ステンレスの調理台、鍋、おたま。鋭かったり、柔らかだったり、温かったり、それぞれ違う色で朝日を跳ね返し、万華鏡のように光でキッチンを満たしていた。私はこの景色が、嫌いじゃない。

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