【効いた曲ノート】ラヴェル:「ダフニスとクロエ」組曲
好きな曲の話。機嫌が悪いときに書くのが定番になってしまった。
多分誰しも季節やシチュエーションごとに聴きたくなる曲というものがあると思うのですが(その昔人類はカセットテープやミニディスクにそういうテーマ別にコンパクトディスクから曲をいれてOSTなどを手製していたんです)、今回は湿度と低気圧の気分曲。別に雨や水がテーマというわけではないんですが。ラヴェルのバレエ音楽「ダフニスとクロエ」から。サムネイルはダニエルラドクリフです。
ラヴェルは、バスク系という出自が由来であろうオリエンタルな音がベートーヴェンとかの骨太さとおフランスなギャグセンスでやってくるのが好きです。ラヴェルといえばボレロですが、時計職人と評される作曲の緻密さに民族音楽とエスプリを追いオリーブオイルしたような傑作が代表的で、ボレロはちょっと振り切りすぎていると本人も言ってたそうですが、15分同じメロディでも飽きるどころか瞑想感や高揚感を徐々に盛り上げてゆくバランス感覚は狂人的な職人芸の賜物と言って良いでしょう。
閑話休題。曲についてのお話し。
「ダフニスとクロエ」は古代ギリシャの恋愛小説を基にしたバレエ作品で、当時「火の鳥」「春の祭典」(ストラヴィンスキー)で一世を風靡していたバレエの巨匠ディアギレフの依頼で作られた曲になっています。ですが、ラヴェルが職人的なアレでバレエ向きというよりもコンサート向きの曲に仕上げてしまったため振付が合わず大喧嘩で舞台もアレとなり、専ら演奏用の曲として現在まで残ってきたというエピソードが…w 実際、古代神話らしい幻想的な雰囲気から歌って踊る大団円まであっというまに駆け抜けていきます。
簡単なあらすじはこちら(NHK交響楽団による解説)
https://www.nhkso.or.jp/library/sampleclip/music_box.php?id=376&iframe=true&width=840
全部聞くと60分くらいあるので一つの場面だけ。海賊にさらわれたヒロインのクロエと主人公ダフニスが再会する夜明けのシーン。徐々に暗闇が晴れてゆき、恋する男女の再会がのびやかに歌われます。なんとなくしとしとぴっちゃんの時に聴きたくなる。
ラヴェルの主要なレパートリーだけあるのか、ものすごい数の音源がありますが、正直どれがどうとかいう気は全然ないです。ただ時代や演奏家によって違いはむっちゃありますのでそれを見つけるだけでも結構楽しい。自分はミーのハーで廉価版や目立つジャケットから入って気に入ったら複数枚探すクチですが、案外そのセール品が一番好みだったりすることもあります(一番最初に見たものを親だと思う理論や、廉価版になるのは超有名バージョンを焼き直したものが多いからというのがあるのでしょう)
数が増えていくうちにだんだん好みが見つかるのはそれこそ食べ物や衣服などの好みがメーカーや銘柄などによって決まることと似ています。最近は音楽配信サービスで気軽に複数の演奏にアクセスできるので収納の心配も減りました。ぽんしゅ館*みたいに軽率にいろんな種類のクラフト・ワークを先っちょだけ楽しみたいというぐうたらな願いをかなえてくれるので実質ドラえもんみたいな時代は来ている。未来だ。
*ぽんしゅ館。いきたい。