散弾銃で死のうと思ってしまった
今年の春、猟銃を手放すことに決めました。猟師をしたくて山で暮らし始めてから6年目の春でした。
猟師を目指すことに決めたのは、猟師を仕事にしたり、有害駆除と呼ばれる取り組みに参加して、お金を得るためではありませんでした。単純においしいお肉を自分の手で捌いて食べたい。自分も山で1匹の生き物として他の生き物と対峙したいと強く思っていました。
実際にカモを撃ったり、イノシシを山でとって、里まで引っ張り下ろして食べたこともありました。巻狩を共にしていた先輩の猟師たちともよい関係を築いていたと思います。
私が続けたかった猟師を諦め、猟銃を手放そうと決めたのは、一度実弾を銃にこめ、自殺を図ったからでした。
その日は冬の夜で、雪がこんこんと降り続いていました。朝2時から起きだして、除雪作業の仕事に出ながら冬の仕事を続けていました。なんとなく、もう十分に生きたという気持ちが常にあって、これ以上長く生きていくことが想像できなくなっていました。
使っていたのは上下二連という散弾銃。弾は色んな号数があり、小さな鉛がパラパラと詰まっているものもあれば、小指の先くらいの鉛が入ったスラッグ弾と呼ばれるものもあります。私は鉄砲へスラッグを込めて、左胸に銃口をを当てて、足先で引き金を引きました。汗がたくさん出て、息も荒くなって、心臓の音も早くなって、頭の中がギーンと鳴りました。今私が生きているのは安全装置がかかっていたから。いつも獲物を狙う時は鉄砲を構える時に安全装置を親指でスライドさせるのですが、構える動作がなかったから、保管した時のままになっていたのでした。
死ねなかったからもう一度やり直す事ができず、体中がガタガタと震えて、目からも涙が溢れてきて、声を出して泣きました。
思い出してもドキドキしてくるのは、本当は生きていたかったからなんだと思います。
どうして自殺しようと思ったのか、これといった理由はありません。給料もしっかりと頂いていて、貯金も少しですが貯めていて、ショックの大きな事があったのでもない。友人もたくさんいて、私自身も外では明るく笑顔でいる事が多いように思います。ただ、人生が長さ、いまを続けることに絶望していたのだと思います。
時々、衝動的に死にたい気持ちが抑えられなくなりそうになります。ため池に2、3度飛び込んだこともあります。あまり思い詰めないようにといつも思っているのに、死にたいと思う気持ちはいつも私の近くにいて、思い出したかのように隣に座るのです。
現在、過呼吸発作が頻繁に起こってしまうために、ひとりで暮らすことが困難になってしまいました。実家の近くで療養中です。車の運転も自分のよく知っている分かりやすい道しか運転できず、仕事も休職中です。できたら仕事に戻りたい。職場の人たちに申し訳ないし、無責任な自分にイライラしてしまい、毎日泣いています。
日々の繰り返しの生活。田植えから稲刈りまでの1年間。田んぼの畦の草刈りや、水路の管理、イノシシなど田んぼを荒らす生き物との戦い。とてもシンプルで、私にとってはその環境の中に身を置いていること自体がすばらしく、幸せなことです。
6年間の山の家での生活は、美しく幸せで楽しいことばかりではなく、悲しいことやつらいこともありました。
少し離れた場所に住む異性からストーカー行為を受け、悩まされていたことや、家の前に釘がばら撒かれていたこと、家が溢れた川の水に浸かったこともあったり、井戸の水が出なくなり、1週間雪を溶かして水を確保したこともありました。人への恐怖と、自然の厳しさ。
渦中にいた時は心の中の動きが激しくて、ひとり暮らしだからなんとかしなければ、という気持ちが強く、他人に相談してみるくらいしかできませんでした。
何が自分を死にたいと思わせているのかは分かりません。
死んでしまうと、全部終わる。死んでしまうと、全部終わってしまう。散弾銃で死ねなかった夜を思い出すと、冷や汗をかいてきて、ソワソワとしてきます。まだ生きていたいんだと思うのです。
今の私には自分のやりがいを感じる事が思い付かないのですが、会いたい人はたくさんいます。友人や家族、その人たちにまた会うために生き続けていこうと思います。
どうしても自殺したくなった時、大好きな人の顔を思い浮かべて、またその人の作るご飯を食べたいとか、あの人とまた変な話をして盛り上がりたいとか、大好きな人からおすすめの音楽を教えてもらいたいとか、こうしたいと思うことを出来るだけたくさん声に出して言ってみます。
生きてると、先のことは誰にも見えないし、今の状況が少しでも良くなる約束もありません。あるのは自分の以前のことと、今だけ。とりあえず今を過ごしていけばいいって思うようにしました。
自分の気持ちの整理も兼ねているので、長くつらつらと書いてしまいました。
私は猫と暮らしていて、朔太郎のために生きようと思っています。元気をもらいます。感謝しても感謝しきれません。
いつもありがとう。
ネズミのおもちゃを運んできてくれた朔太郎
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