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もらったニワトリを捌く①

 出会って間もない大工さんから、「ニワトリを潰して食べんか」と声をかけられた。話を聞くと、隣の人と共同で育てているニワトリがあまり卵を産まなくなってきて、その中でも他のニワトリをいじめている子がいるから、とのことだった。
 緑のトラックシートをかけている軽トラの後ろをついていく。島の道はすごい。1台の車でギリギリのような細くてぐにゃぐにゃとした道が続き、大工さんの軽トラは慣れたハンドル捌きでどんどん上へと登っていく。

鶏舎があった坂道

 ニワトリ小屋へ入ると、大きなニワトリが6羽、新しくやってきたというまだトサカの小さなニワトリが9羽いた。
 「この鳥だ」というニワトリをサッと捕まえて、段ボールの中にすばやく入れる大工さん。大切に育てられたニワトリたちは元気に走り回っていて、この日は卵を2つ産んでいるようだった。
 ニワトリは日照時間に正直に産卵率が上がったり下がったりするそうだ。夏至に近づくほど産卵率が上がり、冬至に向かって下がっていく。冬至を跨ぐと、少しずつ産卵率も上がるのだという。その話を思い出すと、いつも安心をもらう。人も日照時間によって心や体調の変化はあるはずだと思う。

 大工さんにお礼を言って、来た道を戻っていく。ニワトリは段ボールの中で何度か声をあげていた。


※ここから解体の話となります。苦手な方はご遠慮下さい。

この日はじめて出会ったニワトリ

 ニワトリを抱く。冬の寒さの中でも暖かく、胸に手を当ててみると、筋肉の動きの中に心臓の鼓動を感じた。ほおを寄せてみると、いきものの匂いがした。
 ひいおじいさんの家は家の裏に井戸水が出ている蛇口があるので、そこで血抜き、内臓を出すことにした。

 銃猟で、カモやヤマドリ、キジをとったことがあって、何度か鳥を捌いたことがあった。いつもなら鉄砲で致命傷を負っているところをナイフで血抜きをするのだけど、今回は元気に動いているまま、ニワトリの頸動脈にナイフを入れた。
 箱罠に入っているイノシシと同じで、初めは動きが激しく、時間が経つとゆっくりと動かなくなっていく。
 私はニワトリの目をじっと見て、ニワトリも私のほうを見ていた。

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