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Smokey Robinsonを聴きまくる!【8】Going To A Go-Go

1965年に発表されたミラクルズの代表作です。ここ数作にはカヴァー曲も多く収録されましたが、ここではB-4を除きほとんどスモーキーが自作、もしくは共作しており、スモーキーの作詞/作曲者としての魅力が凝縮されています。スモーキーの歌声も、洗練された美しさと力強さを併せ持ち、強く感情に訴えてきます。それに華を添える、コントロールされたコーラス隊とファンク・ブラザーズによるドライブする演奏、どれをとっても非の打ちどころがありません。後のR&B/ソウルのヴォーカル・グループに与えた影響も大きかったのではないでしょうか。

https://www.youtube.com/watch?v=HnJNZJzl2FQ&list=OLAK5uy_mR0rDrZHFb1zWroTAe6wXNV5JWlF48lQA&index=1

 A-1 The Tracks Of My Tears

 スモーキーの最高傑作のひとつです。私が人生の中で、最も多く聴き込んだ曲のひとつでもあります。曲が素晴らしいため、多くのカヴァーも生まれていますが、このミラクルズのオリジナルには録音当時の空気感というか雰囲気がそのままパッケージされている感じで、本当に特別なヴァージョンとなっています。「Smokey , The Poet」はスモーキーの作詞者としての魅力を表す言葉としていろいろな評論で目にしますが、私のようにあまり英語をよく理解しない者にも、甘酸っぱくもほろ苦い、この曲の表現したいフィーリングは強く伝わってきます。マーヴ・タープリン(この曲の共作者でもあります)のギターによるさり気ないけれど印象的なイントロから始まり、いつもハッとさせられるドラムズのフィル・イン、抑制の効いたコーラスが加わる瞬間は何度聴いても心に響き、セカンド・ヴァースが終わったブレイク後のMy smile is my make up I wear since my break up with youって部分から終盤の展開は、本当に感情が昂り、胸がしめつけられる思いです。思い入れが強すぎて、少しまとまりのない文章になってしまいましたが、こうした曲に出会えてよかったなと思います。

 A-2 Going To A Go-Go

 続いてスモーキー流ファンクネスの最高峰の登場です。本当に楽しいダンス・チューンですが、ある種の怖さというか、狂気みたいなものも感じる…というと少し大げさでしょうか。とてもカッコいいジャングルビートのようなリズムと、単純だけど特徴的なリフ、そこに重ねられる「ウウウ ウウウウ ウ~」(伝わりますかね?)というコーラスが繰り返されると、黒人音楽特有のループ感を強く感じます。それにしてもファンク・ブラザーズの演奏は素晴らしいですね。演奏時間は2分46秒ですが、ロングバージョンも聴いてみたくなります。こういう楽曲に対応できるスモーキーのヴォーカルも実に素晴らしく、後年バラディアー的な側面だけを強く打ち出しすぎるのも、ちょっと残念に思えるほどです。

 A-3 Ooo Baby Baby

 メロウネスの極致といってもよい、これも大名曲です。1970年代に多数輩出されたスィート系のソウル・コーラス・グループにも数多くカヴァーされていると記憶しています。それにしてもなんという濃厚さでしょう!今までののバラードとは全く違ったフィーリングで、ロマンティックでドリーミーな世界観に引き込まれます。しかしただ単に甘いだけではない、キリっとしたある種の清涼感のある、とても上品な、味わい深い演奏です。スモーキーのヴィブラートを活かしたハイトーン・ヴォイスは、強いオリジナリティーを発揮し、聴き手の心を強く揺さぶります。また、この曲でミラクルズはコーラスグループとしても新たなステージに突入した感じです。クレジットにはクローデットの名前もありますが、あまり強調したミックスになっておらず、初期にあったポップグループ的な感じは抑制され、アダルトな感じです。そういえばジャケットにもスモーキーの他は、ムーア、ワイト、ロジャースの3人しか写っていません。当時のリスナーにとってはまさに新時代を切り開く1曲だったのではないでしょうか?

A-4 My Girl Has Gone

アルバム冒頭から4曲続けての大名曲が続きます。A-1と少し似た曲想にも感じられ、少しあっさりとしているものの、やはりスモーキーらしさのでた名演といえるでしょう。これだけ名曲が続くと賛辞の言葉が見つからず、音楽から受けた感動を言葉にするのって難しいな、とつくづく思います。歌詞を見ると、彼女に去られた男が自分を励ますような内容で、ちょっと女々しい(?)感じで深みに欠けるようですが、この美メロの前ではそれも吹き飛んでしまいます。ここまでの4曲、本当に完璧です。

A-5 In Case You Need Love

この曲は少し古い録音なのではないかと思います。ブルージーな曲調で、タンバリンが強調されたリズムなど1963年くらいのサウンドに近い感じです。完璧なAサイドにおいてはちょっと箸休め的な古典的なR&Bとなっています。

A-6 Choosey Beggar

とても心地よく、休日の昼下がりに聴くにはピッタリなメロウなミディアムテンポの曲ですが、単純には聴き流すことができない感じです。当然平均点以上の出来ですが、このアルバムにおいては冒頭4曲が凄すぎて、少し魅力が霞んでしまうようです。しかしスモーキーのヴォーカルやバックコーラスも十分魅力的な隠れた佳曲といえましょう。


 B-1 Since You Won My Heart

 少し古いタイプのミディアムバラードです。ドゥーワップ・マナーが強調され、このアルバムの革新性の中では少し埋もれてしまいそうな曲です。

 B-2 From Head to Toe

楽しげなアップテンポのナンバーですが、ちょっと曲として弱いようです。曲間ではソロモンバークのEverybody Needs Somebody To Love(のブルース・ブラザーズによるカヴァー)で使われたあのリフやコールアンドレスポンスも聴けますが、ミラクルズに似合ってはいないようです。

 B-3 All That's Good

 ミドルテンポのR&Bナンバーです。B-2と同様少し曲として弱いように思います。ブラックミュージック特有のグルーヴやループ感はありますが、中途半端に終わってしまっているようです。

 B-4 My Baby Changes Like the Weather

 このアルバムでスモーキーが唯一作詞/作曲に関わっておらず、ハル・ディヴィスとフランク・ウィルソンによって作られています。しかしこれがなかなかの好曲で、当時のモータウンらしい良質なポップさを感じさせます。ミラクルズとの相性も良く、決してアルバムの穴埋め的な曲ではありません。

B-5  Let Me Have Some

ミドルテンポのダンス曲です。「平凡」という言葉は使いたくありませんが、実力者ミラクルズが平均点の曲を、まずまずのパフォーマンスで録音した、という感じでしょうか…。

B-6 A Fork in the Road

アルバムの最後を飾るのは、メロウな名曲です。70年代のスモーキー、そしてソウルミュージックのその後を示唆するようなたゆたうような曲調で、夢世界へと誘われます。あまり楽理に詳しい私ではありませんが、和声の動きによって推進されるこれまでの曲とは一線を画す、新しい息吹が感じられる曲です。例えばマーヴィン・ゲイのDistant Loverなど、後に発表される名曲の源泉のひとつという気がします。

 本記事を書くのに、とても時間がかかってしまいました。それだけいろいろなことを考えさせられる、内容の濃いアルバムだということでしょう。


 #R&B #soul #smokeyrobinson #themiracles #motown #音楽

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