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何世代も残したいと思う、美しい海と大地のミネラルが結晶化した海塩「海の子」

本土と繋がる最西端の島である長崎県平戸市。
手付かずの自然が残る平戸(ひらど)の鹿島浜にある塩炊き屋では「海の子」という塩が作られている。

鹿島浜は生活排水が流れておらず、大型の船が行き交うこともない。
航空写真を見ると明らかに海の色が違うことがわかる。

海が碧く、透明で、そのまま飲めるほど不純物や塩辛さが少ない。
西海岸に面しているため、のんびり夕日を眺めながら海の変化を楽しむことができる。
このまま何世代も大切に残していきたいと思う、そんな浜。

海水の採取は鹿島浜の沿岸部から行うから浜を形成する大地の養分が塩に影響されるようになってくる。
陸地から離れ、沖に出るほど海水の個性は平均化されるため、できあがる塩に差がなくなる。
海の子は海と大地の養分をダイレクトに反映しているんだ。

新月と満月の大潮の日に採取した海水は手作りの流下式塩田によって水分を飛ばして4,5倍に濃縮される。
こうしてできた灌水を鉄製の平釜で中5日じっくり煮込んで結晶化してゆく。

どのミネラルをどれだけ残すかで塩の風味は変わってくる。
その微妙な調整を行うのはまさに職人技。
海流によってもミネラルの成分や大雑把な特徴は異なる。
海の子はにがりを多く残していると言われるが、それでもエグみがなく、甘い塩に仕上がっている。

甘みのある野菜との相性がとてもよく、サラダやドレッシング、スープに素材の持ち味をさりげなく引き出してくれる小回りの利く塩。

僕が大好きな埼玉県日高市にある石窯パン屋「イマココ」のオーナーは日本全国の塩を探し歩いて見つけたおいしい塩で、すべてのパンに海の子を使用している。

直接海の子を触れることになったのは岡山にあるWACCA FARM。
彼らは海の子を普段使いして、関連会社の自然食品コタンが海の子を扱っていた。
コタンは目利きが大変素晴らしく一瞬でファンになってしまった。

しかし塩の注文が増えるほど、塩の作り手の負担が多くなってしまい、人生の残り時間が奪われてしまう。

優れた塩を探すことに労力を費やすのではく、実は、自分の身近な海で塩を手作りすることが大切なんだ。

近くに海がなくても、街中でも、山でも塩は作れる。
塩作りはそんなに難しいことではない。

近くの海が汚くて作りたくないのなら、おいしい塩が作れるような美しい海にしようじゃないか。

これからを生きる人たちに塩作りがもっと身近になって欲しい。

海の子を作る今井さんのお師匠さんはそうした想いで塩作りの普及活動を行っていたそうだ。

いい塩作りにはきれいな海と大地が大切。
塩に僕たちが暮らす場のエネルギーが凝縮されていく。
だからこそ、暮らしの拠点を美しいままに保って残していくことが、僕たちが果たすべき役目なのだろう。


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