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将棋指してみようかと、

 将棋に強く興味を持ったのは今までに2度ある。1度目はNHKの連続テレビ小説(いわゆる朝ドラ)で「ふたりっ子」を放送していた時。2度目は藤井聡太四段(当時)がプロデビュー後の連勝記録を伸ばし続けていた時だ。

「ふたりっ子」の時

 ふたりっ子は1996年度の後半に半年間放送された連続ドラマである。当時は楽しんで見ていたが、録画して何度も見ていたという訳でもなく、一通り見ただけのドラマの記憶は断片的である。香子、銀じい、オーロラ輝子と名前がすっと浮かぶ登場人物もいるけれど、ストーリーも登場人物も覚えていないことが多いだろう。
 現在の記憶はともかく、当時はドラマを楽しんでいたし周囲でも話題になっていた。ドラマで大きな比重を占めていたのが将棋の話だった。主人公のひとりである香子が将棋に魅了されプロの将棋棋士になるのがドラマの大きな流れであった。だからドラマの放送期間中は自然に将棋そのものへも興味が向いた。ちょっとやってみようかという軽い気持ちで安価なマグネット式の将棋セットを買ってみた。
 将棋はひとりではできないので家族に頼んで指してみたのだが、どうにも自分が思っていたのと違う。全然面白くない。面白くない原因は明白だった。私が弱すぎたのだ。相手をしてくれた家族も初心者ではあったが、私から見たら強い初心者だった。対して自分は全く将棋向きの思考力を持ち合わせていなかった。開始早々、飛車が相手の持駒になっていては何も楽しいことなどない。すぐにやめてしまった。その後は将棋に対する特別な興味は特にわかなかった。将棋に関する事といえば、「羽生善治さんは知ってるよ」という程度の認識に落ち着いた。

藤井聡太四段29連勝の時

 私が「藤井聡太君というすごい子がいるらしい」と認識し、再び将棋に興味を持ったのは2017年の6月頃だった。その時期の藤井聡太四段(現八冠)の活躍については公式、非公式含めた様々な媒体で数多くの人が語っていることなので、今さらここでそれを説明するのはやめておく。ともかく私は再び将棋に興味を持つようになった。
 興味を持ち始めてすぐに気づいたのは、「ふたりっ子」の時代よりも将棋を楽しむのが簡単になっていたということだった。基本的な将棋の知識はインターネットの検索で十分に得ることができたし、観戦に関しては、ABEMAやニコニコ生放送で気軽に観ることができた。指す事に関しても20年前とは比較にならないくらい気軽に楽しむことができるようになっていた。
 わざわざ将棋盤を出す必要もなければ、指してくれる相手を探す必要もない。スマホひとつあればアプリをダウンロードして1人で将棋を楽しむことができようになっていた。この1人でというところが自分にとっては重要で、そうでなかったら試しにやってみようなどとは思わなかっただろう。

現在

 2度目の将棋への興味は現在まで続いている。すでに自分の趣味として定着した状態だ。指す事に関しては将棋アプリ、棋書、NHKの将棋番組などを試して指す将を目指した時期もあった。ネット、対面いずれでも実戦にチャレンジしてみようと意気込んだ時もあった。思いついた手段はまず試すことにして、やってみて合わないと思ったら早々に見切りをつけた。取捨選択を経て今は将棋アプリのぴよ将棋だけ使っている。そのぴよ将棋も、使うのは駒落ちの対局機能と毎日更新される実践詰将棋を解くことにほぼ限定している。
 結局2017年以降も「ふたりっ子」に感化された時と同じく、平手の将棋を指して楽しむという境地には至らなかった。私にとっては将棋は観るものであり、指すものではなかったようだ。だが、そこをはっきり認識できたのは、一度は指そうとしたからだとも思う。毎日使うぴよ将棋も、しまい込んだままの将棋セットも、積ん読気味の棋書も、すでに削除したネット将棋のアカウントも、いずれも自分が将棋と良好な関係を築くために必要なアイテムだったのだろうと感じている。

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