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NIKKE研究各論(30) キメたくな〜い?

 前回に続き、嫁Dのイベントで出てきた幻覚成分を含んだアロマ(中身にミストという作中の麻薬が含まれている)について紐解いてみよう。

 今回は麻薬についてである。ニケには基本的に麻薬成分を検知すると防御する機能を持ってはいるが、それを上回る量をアロマから摂取してしまったDは幻覚を見てしまう。まずは脳がドラッグを摂取した時の働きを調べてみた。

 ドラッグには作用によって主に三種類に分けられる。
 アヘンやモルヒネ、PCPやケタミンといった麻酔薬は、脳内物質のアセチルコリンやグルタミン酸を遮断して神経細胞が興奮出来なくなることで脳の神経を抑制する。こういった作用をするドラッグをダウナー系という。

 コカインや覚醒剤など、脳内の神経伝達物質であるノルアドレナリンの受信に対して作用する(通常なら適度に保たれる量を阻害する)ことで強い覚醒作用を得られるドラッグをアッパー系という。

 LSDやMDMAなど、幻覚を起こすものは幻覚系(サイケデリック系)という。

 またこれらは大体共通して、脳内報酬系に強い関わりを持つ神経伝達物質のドーパミンにも作用する。ドーパミンをたくさん出したり濃度をあげたりすることで薬物への依存を強めるのだ。
 さらに薬によっては身体に強く作用するものがある。例えばヘロインはモルヒネより効果が強いが、身体的依存も形成しやすく2〜3時間おきに使わなければ痛みや吐き気などの激しい禁断症状に苦しめられる。

 次に薬物(ドラッグに限らない)の投与経路である。漫画やドラマでは麻薬の粉末を鼻から吸ったり注射器で血管に打ったりするのをよく見かけるだろう。上記の場合だとアロマディフューザーの気体を吸って幻覚をみているじゃないか。
 投与経路も大きく分けて三つに分かれる。
 一つ目は局所投与。患部に直接軟膏を塗ったり、目薬をさしたりすることをいう。
 二つ目は結腸投与。コレはケツから……というわけではない。つまりは薬を口から飲んで消化吸収されて体の患部に効くようにする方法だ。
 三つ目は非経口投与。消化器系以外の投与で全身に効くようにする方法だ。局所投与との違いは薬の効く範囲だ。向こうは投与した部分だけ、これは全身に影響が出るのである。

 勿論、投与方法によって薬のききかたに違いが出る。口からの場合は比較的安全だが、薬の成分が行き渡るまでの時間が長いし思ったより効かないかもしれない。
 一方で、気体吸引の場合はすぐに効果が現れるものの、量の調節が難しかったりする。
 注射は効果も早いしある程度簡単だが、衛生面に気をつけないと病気の媒介をしてしまったりする。

 さて本題に入ろう。ニケ本編でミストかそれに類する薬物が出てくるストーリーは三つある。特徴は以下の通りである。
1:基本的にキャンディ状態で存在する。溶かして吸入させても効果がある。
2:接種するとハッピーな気分になったり、幻覚を見たりする。痛みにも鈍感になり、攻撃的になったりもする。

 これを見る限り、ミストはサイケデリック系というよりはダウナー系の薬物なのかもしれない。
 幻覚というとサイケデリック系なのだが、ダウナー系で幻覚とかあり得るのかと言われると、全く考えられないわけでもない。そもそもコレらは麻酔薬であるが、一種の陶酔感を得るために麻薬として使用するのだから。
 さらにダウナー系のクスリの中には脳を部分的にしか麻痺させないものも存在する。
 PCP(フェニルシクロヘキサルピペリジン)は外科手術用の麻酔薬として開発されたものの麻酔から覚める際に妄想や暴力を振るったりする副作用が出て1965年には使用が禁止された。コレは自分が自分の肉体から離れるような感覚を生じることから解離性麻酔薬とも呼ばれる。PCPは夢や幻覚を司る大脳辺縁系を麻痺させないので大脳新皮質と大脳辺縁系の整合性が取れなくなると考えられている。

 整合性が取れないとどうなるかというのは脳の部位の機能を知ればわかりやすくなる。
 大脳辺縁系は海馬や扁桃体などを含んでいることから、危険な状況を判断して適切な行動に導くための部分である。
 一方の大脳新皮質は社会で上手く生きるための機能を多分に含んでいる。極端な例えだが、大脳辺縁系で「踏んだら危ないからゴミを捨てろ」と判断したとして、そのまま隣の住人にゴミを手渡して捨てといてと言おうものなら爪弾きにあうのは目に見えている。もっと穏当に自分でゴミ捨て場まで持っていったとしても回収日が違えばゴミは引き取ってもらえないばかりかルール違反だとなんか言われるかもしれない。つまりここは理性を司っていると言える。
 さて、今オクスリが効いて大脳新皮質はお眠ですが、このクスリは辺縁系には作用せず元気いっぱいだ。するとコイツは「ハメ外したーい」と活動し始める。コレが解離性麻酔薬の幻覚を生むメカニズムなのである。

 あと、大麻やLSDをネットで調べている際両方で「セットとセッティング」に気をつけようとの指摘を発見した。両方ともサイケデリック系ではあるが使い方に共通項があるとは驚きだ。
 セットとは使用者本人の心の状態のことで、セッティングとは場所や他の人など周りの環境を指す。コレに不備があるとドラッグを正しく(?)楽しめないのだそうだ。
 これは嫁Dの話で出てきたロイヤル層向け集会所と当てはめればわかりやすいのかもしれない。彼らは心に不安を抱えているが、それを解決するために祈りましょうという触れ込みを信じてアロマが立ちこめた場所で黒い画面に向かって拝んでいたりする。病気が治りますようにだとか事業が上手く行きますようになどマイナス方向の内容でも前向きに考えることによってクスリの効き具合が変わるのかもしれないし、また、この場にいるのは基本的に同じ金持ち連中ばかりだから安心感・親近感もわこうというものだ。

黒のカラーコードは#000000。
つまりシックスオーの関与を示唆している……

 ちょっと長くなってきたので、今回はここまで。せっかくなのでこのまま依存について詳しく調べよう。コーヒー愛飲者やエナドリ中毒患者もいるしな。

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