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NIKKE研究各論(5) デュアル・エヌ-空の記憶-

 フィニアス・ゲージの話を参考にする際に発見した中部学院大学のサイトを見てみると、色んなことが調べられて良い。とか思いつつとある超記憶能力の男の話に辿り着く。転載禁止なのでサイトの入り口のリンクだけ貼っておこう。一番下の方な。

 という事で、今回は超記憶能力ゆえにニケに成らざるを得なかったエヌちゃんと、記憶を巡るお話である。
 エヌちゃん(他言語版ではアン)ことN102というニケは非常に特異な存在である。彼女は記憶関係のデータ採集を目的とした存在であり、1日の記憶を毎日消去される。この辺の事情は致し方ない面と、不条理な面が入り混じっており話を難しくしている。それは一旦脇に置いておいて、脳が物事を記憶する事、記憶の思い出し方を調べてみようと思う。

エヌちゃんは名前を覚えていないご様子。ニケなので必要ないと消されてしまったのだろうか…?


 これは実際の人物の話なのだが、H・M氏は10歳頃から側頭葉てんかんの症状が出ており薬でも良くならないことから27歳の時に手術に踏み切った。しかし両方の側頭葉を切ってしまった。

 結果、氏の記憶能力はほぼ障害され、手術後の新しい記憶はほぼ出来なくなり、小さい頃の記憶以外は思い出せない状態になってしまった。氏は「現在」にしか生きられなくなったのだ。ちょっと昔に、1週間しか記憶が保てない女の子との恋愛作品があった気がするがそれよりもキツい状態である。
 だが、氏にも残ったものがあった。短期記憶と呼ばれる短時間だけ覚えておける能力(例えばクイズでなんか単語を記憶させてその後すぐに答えさせるやつ)と、手術より前に身につけていた意味記憶(一般知識や言葉の意味)、手続き記憶(物事の扱い方。例えば食事時の食器の使い方や泳ぎ方等)である。
 短期記憶の逆に長期記憶も存在する。これは我々が主に記憶と呼ぶ、脳に長期間にわたって情報を貯蔵する機能である。これはノート書いて復習して…という短期記憶を繰り返して身につけるものである。また、短期記憶のそのまた前段階の記憶にあたるワーキングメモリー(作業記憶)というのもある。
 言葉で表現できる記憶は陳述記憶と呼ばれる。これは意味記憶とエピソード記憶に分かれている。エピソード記憶は事象に関する記憶(思い出)であり感情の強さで記憶の残り易さが変わる。ちなみに女性の方がよく覚えているそうだ。
 手続き記憶の種類のひとつに条件付けがある。以前紹介したパブロフの犬の実験がそれである。条件付けの種類としては、ある刺激と一緒に提示した無条件刺激によって反応を形成する古典的条件付けにあたる。ここでは、スキナーが提唱したオペラント条件付けを説明する。例えば、レバーを入れるとエサが出る装置に実験用ネズミを入れる。ネズミはレバーを入れたらエサがもらえるようになる。これが何回かあると、ネズミは盛んにレバーを入れるようになる。レバーを押す事で「エサがもらえる」という報酬が与えられたため頻度が上がったのだ。
 これは戦争での兵士育成にも使われている。きちんと標的を撃つことが出来ると休暇や勲章を貰えるとかだ。特に人間相手ではセーブがかかるのでこうやって慣れさせていくというわけだ。
 さて、長々と記憶の種類について書いてきたわけだが、もう一回最初に戻って欲しい。H・M氏が左右の側頭葉を切除した話である。様々な脳の研究者は、記憶はどこでするのかを調べるため、実験動物の脳を切除なり薬などで機能を停止させたり、あるいは不幸にも病気や事故で脳を損傷した患者を調査したりしたのだ。その結果、記憶は脳の海馬や前頭前皮質、大脳皮質などさまざまな部位に複雑な経路をたどりながら貯蔵されていること、記憶の種類によって使われる領域が違うことがわかってきている。

 エヌちゃんの場合はNIMPHが介在した記憶を用いているので、若干いびつなところがある。まず、記憶すること自体は全然問題ない。というか記憶力自体は凄まじいからこういうことになっているのだ。 彼女がニケになったのは、10歳の時に超記憶能力(医師曰く超高解像度写真を1秒に30回ずつ撮影するのと同様)により脳が過負荷に耐えられず死にそうになることが判明したためだ。

エヌちゃんのお母さんアンジェリーナ。身を粉にして働くのは医療費の他にも精神的にツラいことに直面したから。レスパイトケア(介護者のためのケア)は必至だ。

 ニケになった後も再発してしまい、やむ無く記憶を消すことで脳を安定させることになったが、少なくともエヌちゃんは母の記憶(家族の記憶は消すのが基本なので)のほか、1日に体験した物事は全て忘れることになった。
 覚えていることは、1日のスケジュールを書いた手帳を読んで1日を過ごす事と、コロッケやしおり、本や図書館といった名称や意味くらいである。

異なる日にはホットコロッケ(辛い)が好きらしいと認識するが、辛くて食べられなかったので、らしいとは思い込みに過ぎない。
どうやら感情が伴うことは覚えていないようだ。地味にえげつない。(フラグ)

また、戦闘の方法(ロケットランチャーの使用や身の隠し方など)はスムーズである。これは手続き記憶には着手してないのかNIMPHのおかげなのかは不明だ。
 エヌちゃんの場合、NIMPHが脳内の全ての記憶をセーブすることに成功しているはずだ。それでもって、1日毎に蓄積された記憶の大部分を消してそれ以外(プロフィールなどの最低限必要な記憶)はNIMPHに依存してれば生活するには大丈夫なはずである。それにしても凄まじい記録容量である。何テラバイトくらいあれば人生のすべてを保存できるのだろう?(Twitterにてなんかの取説で見た)
 なお、スノーホワイトら最初期のニケのNIMPHには、現在ほど記録容量がないのは以前論じた通りである。彼女らもほんとうに必要な記憶以外は消さざるをえなかった点ではエヌちゃんと同じなのかもしれない。情動が失われてないことだけが幸いというべきか。

ドロシーはイマイチよくわからない。昔の記憶が保たれている事と、思考転換も妄執(オイオイ)によって抑え込んでいることだけは判明している。

 続きは、感情が記憶に対してどう働くかもう少し紐解きたい。

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