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オフコース全曲分析みたいなもの(?) こころは気紛れ


楽曲について

個人的インプレッションみたいなもの

『SONG IS LOVE』収録曲で、のちに新録音でシングルカットされた人気曲です。初めて聴いた時は軽快なリズムと、少々コミカルな歌詞から『眠れぬ夜』の系統かなと思いました。こういった系統は嫌いではないので、もちろんすぐにお気に入り認定しています。

最初に『SELECTION 1973-78』バージョンを聴いていたので、『SONG IS LOVE』バージョンを聴いた時は、脱力感のあるボーカルに少々戸惑ったものです。また、シングルバージョンは更なる違和感を感じて、もはや別物かとも思いました。

個人的には『SELECTION 1973-78』バージョンがベストテイクかと思います。

基本スペックみたいなもの

アルバム1976年11月5日リリース
『SONG IS LOVE』A面3曲目に収録
シングル1977年2月5日リリース
『こころは気紛れ/あなたがいれば』A面に収録
『SELECTION 1973-78』B面4曲目に収録

作者クレジットみたいなもの

小田和正/作詞・作曲
オフ・コース/編曲

参加ミュージシャンみたいなもの

小田和正  Lead Vocal, Chorus, Electric Piano
鈴木康博  Vocal, Chorus, Electric Guitar, Acoustic Guitar
小泉良司  Electric Bass
大間ジロー Drums
松尾一彦  Harmonica

曲の全体構成みたいなもの

イントロ(G) → Aメロ1 → A'メロ1 → サビ1 → 間奏 → Aメロ2 → A'メロ2 → サビ'2 → サビリフレイン → A''メロリフレイン → アウトロ(Aに転調) → フェイドアウト

2番のサビは変則的で、1番にある「〜ゆきずりのオンナのよう」近辺の2小節がカットされている構成です。アウトロ前ではAメロの変形で「〜私はまだ若いから」のリフレインが入り、転調してアウトロ、ハーモニカソロでフェイドアウトとなります。

リズムみたいなもの

BPM=115ぐらい。意外にゆっくりですが、シンコペーションの効いたリズムで軽快な印象です。

調みたいなもの

歌部分は全曲通してGメジャーですが、アウトロで全音上がってAメジャーに転調します。

歌詞みたいなもの

一種の会話劇的な内容で、気があるのに気のないふりをする男と、気があるかないか微妙な女の駆け引きという感じで、なかなか面白いです。小田の歌詞はセリフが出てくるものが多いですが、ここまで徹底して両者の対比を見せているのはあまり例がないです。

Aメロ部分が1番は男、2番は女で、サビはどちらも男ですね。男はけっこうプライドが高くて、本当は縛り付けておきたいのに、プライドが邪魔をしてストレートに言えず、結局逃げられてしまう感じかと。

対する女は縛られるのが嫌で、のらりくらりと躱しては、どこかへ行ってしまう自由人という感じです。

男からすると掴みどころのない女の態度に呆れつつも、可愛くてしょうがないという気持ちが垣間見えて、思わず「素直になれよ」と言ってやりたい気分になります。

各パート

リードボーカル(小田和正)

ファーストインプレッションでも書いた通り、『SONG IS LOVE』バージョンはかなり脱力感あふれるボーカルになっています。全編ダブリングがかかっているようです。

コーラス(小田和正/鈴木康博)

概ね左右2パートずつの4パートです。もしかすると部分的にさらに重ねているかもしれませんが、ちょっと聴き取れなかったです。

1番のサビの部分から入りますが、かなり細かいフレージングになっています。リードボーカルに対するハモリは「〜春にゆられ」の部分のみで、あとはバックコーラスとカウンターメロディの「〜せめないで」と「〜こころは気紛れ」です。

2番サビ直前からもコーラスが入りますが、ここはオクターブユニゾンになっていて、リフレインからは和音パートに分かれるという、目立たないけど凝った仕掛けになっています。

エレクトリックピアノ(小田和正)

目立つところでは、センターチャンネルに断続的にアルペジオで入っています。かなり強めのリバーブが掛かっている上、アタックが弱くてサスティンが長いので、コンプレッサーがかけられているのではと推測します。

このエフェクトに加え、ボイシングもかなりオープンなこともあって、最初はエレキギターの音色ではと思ってました。

シングルバージョンで、同じフレーズが明らかにローズ系の音だったので、やっとエレピと認識できた次第です。試行錯誤的というか、いろいろ試していたんですね。

これとは別に「生」のローズピアノによるコードバッキングも入っていますが、非常にミックスレベルが小さいので、比較的静かなイントロ部分でかろうじて聴き取れる程度で、歌が入って以降はほぼ聴き取れません。

アコースティックギター(鈴木康博)

アコギはこの曲ではかなり目立っている、というかやはりイントロのリフというかアルペジオが、曲のイメージの多くを支配している気がします。

終始左右チャンネルに入っていて、『眠れぬ夜』同様、単なるアルペジオではなく、経過音なども絡めた手の込んだものになっています。

いずれも7フレットという結構な高域にカポタストを装着して、Cメジャーに移調して弾いているのが確認できます。これ7カポでC→Em7→FM7とアップダウンのコードストロークを弾くだけで、あのイントロがほぼ再現できちゃうので、あら不思議という感じです。

エレクトリックギター(鈴木康博)

サイドギターはハーフミュートのリフからスタートして、アコギといいコンビネーションでイントロを奏でています。

Aメロからはリフを織り交ぜたコードストロークで、サビからはカッティングの入ったストロークになっています。

リードギターは間奏部分のみで、ここではボトルネック奏法で伸びやかなフレーズを奏でています。歪みは軽めで、コーラスをかけて左右チャンネルに振っているようで、定位が不安定な感じに聞こえます。

エレクトリックベース(小泉良司)

かなり音数多めなプレイになってます。特にAメロ部分では、無音部分を織り交ぜたキレのいいプレイで、シンコペーションの効いたリズムを強調しています。

鈴木はベースの正メンバーについては、清水よりも小泉を推したようですが、リズムにこだわりのある鈴木からすると、なるほどと頷けるプレイかと思います。

ドラムス(大間ジロー)

緩急織り交ぜたプレイで、出だしは静かですが、サビではシンバル系を駆使したなかなか派手なプレイになっています。

1番2番のサビではハイハットのオープンと、クラッシュシンバルを交互に織り交ぜたプレイですが、リフレイン部分ではライドシンバルを裏拍にアクセントを付けて叩きつつ、合間にクラッシュを入れる、かなり派手なプレイです。

アウトロではクラッシュに加えて、さらに高音のスプラッシュシンバルの音も聞こえます。

フィルインもいろいろなパターンで入っていて、サビ部分の盛り上げに貢献しています。

ハーモニカ(松尾一彦)

この当時の松尾のハーモニカはまだクロマチックではなく、10ホールを使用しているようです。メイン部分ではG調性のものを吹いて、アウトロではA調性のものに持ち替えていると思われます。

クロマチックのようなレバーアクションはありませんが、軽量で取り回しやすい10ホールならではの軽快なプレイが、この曲に合っていると思います。

別バージョン

シングルバージョン

小田和正  Lead Vocal, Chorus, Electric Piano, Synthesizer 
鈴木康博  Vocal, Chorus, Electric Guitar, Acoustic Guitar
清水仁   Electric Bass
大間ジロー Drums
松尾一彦  Harmonica
(推測)

賛否両論あるシングルバージョンですが、このバージョンは清水がレコーディング初参加したという記念すべきテイクです。

好きか嫌いかは別として、こういったバリエーションはありだと思います。ただアウトロのバラードパートは、ちょっとやりすぎかなという気もしますが。

テンポはアルバムに比べてかなり速く、その分ベースは音数を減らさざるを得ないようです。ドラムもけっこう忙しそうです。サビではアルバムバージョンと違い、スネアの4拍打ちでより派手な印象になっています。

コーラスはほぼアルバムに準じていますが、サビではハーモニーパートが追加されてより華やかです。

イントロにはけっこう派手なシンセが入っています。かなり太めの音で、軽めのポルタメントがかけられています。

シンセは中盤でも、細くて柔らかいパッド系の音が和音で入っていますが、当時は和音の出るポリフォニックシンセは、まだかなり高価&巨大で一般的ではなかったと思うので、何処かのスタジオで調達したか、2回重ねたかしたのですかね?ちなみにこのあとオフコースサウンドで大活躍するProphet-5は、この翌年の発売です。

ギターもエレキのサイドギターはかなり派手なプレイになっています。逆にアコギは1本だけになっているようです。

ハーモニカはここではクロマチックになっているようです。レバーアクション特有の装飾音が出てきているほか、半音階のメロディも加わっています。転調の多いオフコースの曲では、キーごとにハーモニカ揃えるのも非効率ですからね…

どうでもいいですがこのジャケのイラスト、似てるは似てるんですが、なんだか法廷画のようでちょっと怖いです。

『SELECTION 1973-78』バージョン(Alternate Take)

小田和正  Lead Vocal, Chorus, Electric Piano
鈴木康博  Vocal, Chorus, Electric Guitar, Acoustic Guitar
小泉良司  Electric Bass
大間ジロー Drums
松尾一彦  Harmonica

このバージョン、初めはボーカルを差し替えただけかと思っていたのですが、Apple Musicでは(Alternate Take)となっているので、同時期の別テイクのようです。

LPやCDではこの表記が無いので、ずっとボーカルのみ差し替えが定説になっていましたが、よく聴くとコーラスもちょっと違っているのに加え、調べてみると僅かにテンポも速いようです。

それ以外はほぼ違いがわかりません。ドラムのフィルインやベースのフレーズが僅かに違う気がしますが、気のせいかもしれません。

テンポが違うということはバックトラックも別テイクということでしょうが、聴き分けがつかないほど、ほぼ同じ演奏を再現していたということで、それはそれで驚異的だと思います。

こちらのボーカルは非常に歯切れが良くなっており、特に「〜ナマイキナオンナ」のあたりの、吐き捨てるような歌い回しは、本当にムカついてる感じで大好物ですw
一部の譜割りも変更になっていて、「〜外へ出たいから」のところは大きく変更されています。

全体のミックスも変更されていて、アコギは若干小さめで、イントロ部分では、オリジナルではほとんど聞き取れなかったエレピのコードがしっかり聴き取れます。

ベースが小さめになっているのと逆に、ドラムは若干大きめになっていて、軽快な印象になっています。

また、間奏のリードギターはセンターチャンネルにまとまっているので、定位がふらつく感じは無くなっています。

非公式ライブバージョン(1976年10月23日・中野サンプラザ)

小田和正  Lead Vocal, Electric Piano
鈴木康博  Vocal, Electric Guitar
松尾一彦  Acoustic Guitar, Harmonica
清水仁   Electric Bass
大間ジロー Drums
BUZZ/ラジ Chorus
(推測)

こちらはアルバム発売前にコンサートで披露された音源で、当然アルバムバージョンが基本になっていますが、出だしは小田のピアノソロからになっています。

まだ清水、松尾は参加して間もないということで、コーラスは担当せず、コーラス要員のゲストを別で呼んでいたようです。コメントによるとBUZZラジということで、どちらも実力派です。特にBUZZはコーラスが売りのデュオということで、オフコースとはよく比較されがちなグループでした。

基本アルバムバージョンですが、サビのハモりはシングルバージョンと同様になっています。

非公式ライブバージョン(1980年6月28日・日本武道館・映像あり)

小田和正  Lead Vocal, Electric Piano, Clavinet
鈴木康博  Vocal, Chorus, Electric Guitar
松尾一彦  Chorus, Acoustic Guitar, Harmonica
清水仁   Chorus, Electric Bass
大間ジロー Drums
(映像より推定)

こちらは非公式で画質は悪いながらも、なんと映像付きです!

派手だったシングルバージョンをさらに派手にした感じで、出だしはマイナーキーなのに加え、鈴木のハードめなエレキと、小田のクラビネットの共演で、まるで別の曲のように聞こえます。

コーラスは清水、松尾も加わっていますが、サビはリードボーカルにハモりをつけるスタイルで、2番のA’メロ終わりからはスタジオ版同様のコーラスが聞けます。

アコギは松尾ですが、例のリフではなく終始コードストロークです。が7フレットにカポタストを付けているので、なんとなくそれっぽく聴けちゃってますw

英語詞バージョン(英題:Susan)

小田和正  Lead Vocal, Electric Piano
鈴木康博  Vocal, Chorus, Electric Guitar
松尾一彦  Acoustic Guitar, Harmonica
清水仁   Electric Bass
大間ジロー Drums
(推測)

こちらは大変貴重な音源で、全編英語詞になっています。おそらくテープが古くなって伸びてしまっているのか、ピッチも不安定でところどころドロップアウトもありますが、そんなことはどうでも良いぐらい貴重なテイクです。

海外進出を目論んでいた時のテイクだそうですが、こちらの英語詞もしっくりきてますね。これで進出に成功していたらどうなっていたのでしょう?

締めみたいなもの

本当はこの記事、もっと早くアップする予定だったのです。ところが『SELECTION 1973-78』バージョンが完全に別テイクな可能性があるということに気づいたせいで、大幅に書き直したり、両テイクを何度も交互に聴いたりで、めちゃめちゃ手こずってしまいました…

この可能性は次の『青春』にもあるんですよね。さらにそのあとには始めから難題が約束されている『潮の香り』と…

確実にペースは落ちますが、必ずやり遂げるつもりですので、よろしければどうぞお付き合いくださいませ。

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