オフコース全曲分析みたいなもの(?) でももう花はいらない
楽曲について
個人的インプレッションみたいなもの
初期の鈴木康博代表作で、今でも折に触れてご本人が歌っている作品です。
アコギ2本でスリーフィンガーピッキングという、かなりフォーク色の強い曲ですが、随所随所にコード進行やアレンジの工夫がされています。
最初聴いた時は「もう〜 ぉぼくに〜は〜 ぁはなは〜 ぁさか〜な〜い〜♫」という独特の歌い方に、正直面喰らいました。この歌い方が苦手という方、実はけっこう居るのでは? 実は私もそうでした。今はもう慣れたので気にならないどころか、味とさえ感じていますが。
私が聴き始めた頃のオフコースは、すでにポップスからロックに移行しようかという時期でしたので、思いっきりフォーク臭のするこの曲は、オフコースというグループの歴史を感じさせて、逆にかなり興味深かったです。
基本スペックみたいなもの
アルバム1973年6月5日リリース
『オフ・コース1/僕の贈りもの』A面6曲目に収録
『秋ゆく街で/オフ・コース・ライブ・イン・コンサート』B面7曲目に収録(ライブバージョン)
『SELECTION 1973-78』A面4曲目に収録
作者クレジットみたいなもの
鈴木康博/作詞・作曲
オフ・コース、重実博、矢沢透/編曲
青木望/ストリングス編曲
参加ミュージシャンみたいなもの
鈴木康博 Lead Vocal, Chorus, Acoustic Guitar
小田和正 Vocal, Chorus, Acoustic Guitar
重実博 Electric Bass
矢沢透 Drums
※以下推定
金山功 Bell, Grockenspiel
山内喜美子 Harp
※クレジットは『SELECTION 1973-78』のものに、おそらく『オフ・コース1/僕の贈りもの』で誤記されたであろうパートを推定で加えています。『オフ・コース1/僕の贈りもの』はクレジット内容がかなり怪しく、この曲でもローズピアノで羽田健太郎の名前がクレジットされていますが、私が聞いた限りそれらしき音は聞き取れませんでした…
曲の全体構成みたいなもの
ギター2本のみでのイントロ → Aメロ1 → A'メロ1 → Bメロ1 → A''メロ1 → 間奏 → Aメロ2 → A'メロ2 → Bメロ2 → A''メロ2 → サビ(延々とリピートしながら盛り上げ) → ギター2本のみでアウトロ
この曲もサビが定義しづらく、上でいうBメロを「小サビ」、サビを「大サビ」にしようとしたのですが、ちょっとわかりにくいかなということで上のようにしました。「サビ」とした部分はAメロのコード進行とメロディを下敷きにしていますが、最も盛り上がる部分なのであえてサビとしています。
最後のリフレイン部分はミックスで工夫していて、ドラムス以外がじわじわフェイドアウト、逆にストリングスのボリュームがじわじわ上がって、最後にはドラムスとストリングスが大音量、ボーカルとコーラスが聞き取れるギリギリ、ギターとベースはほとんど聞こえなくなります。
そして派手なドラムフィルインの後に静寂が訪れたあと、ギター2本がフェイドインしてきて静かに終了と、かなりドラマティックなエンディングが演出されています。
リズムみたいなもの
テンポはBPM=85ぐらいのシャッフルビート。シンコペーションの効いた軽快なギターのスリーフィンガーもあって、実際のテンポよりはかなりスピード感があります。
調みたいなもの
キーは全曲通してCメジャー。擬似転調的なものもないので、非常に素直な調性になっています。
歌詞みたいなもの
まだけっこう若い頃にも関わらず、妙に達観した感じの歌詞です。もっともオフコースの歌詞は小田も含め、初期からかなり「年寄りくさい」ものが多いですw
この歌詞の中の「花」は何を指しているのでしょうか?単純に考えれば「若さゆえの輝き」とか「純愛」とかみたいなものですかね?いきなり「〜もう僕には花は咲かない」とかなんか絶望的なこと言ってますけど…。
全体で見ると、学生時代は純粋にキラキラしてたけど、社会に出て大人になって汚れてしまった…みたいな、実はみんな思い当たる節のある話かと。
とは言え、それを悲観的に見ているかというとそうでもないんですよね。むしろそうなった「大人」の自分を受け入れて、下手すると誇ってる節も無きにしも非ずな感じです。
私はこの考え方、字面では分かっていても、感覚的には理解出来ずにいます。きっと精神の成長が15歳ぐらいで止まっているのでしょう。
その点では現在の私よりずっと若い、当時の鈴木康博がこういう詞を書いたというのは驚異的だと思います。
各パート
リードボーカル(鈴木康博)
前述のように独特のクセのある歌い方をしています。これは「前の節の最後の母音を伸ばしてるけど途中が聞こえない」という演出なのではと最近思い立ったのです。
「もおぉ〜 ぉぼくにはぁ〜 ぁはなはぁ〜 ぁさかない」
という感じに。なんか字面にすると怪しい呪文みたいですが…
ですが2番ではこの法則に当てはまらないのがちらほら…やはり単なる勢い付けなのでしょうか?
まあそのクセを除けば、伸びやかなハリのある歌声で、曲のテーマとは相反しますが「若さ」を感じるボーカルです。
小田が合流してくるのは終盤もいいところなので、ほぼ大半をソロでこなしています。ユニゾンメインでソロの少ない『オフ・コース1/僕の贈りもの』では珍しい構成です。
サイドボーカル(小田和正)
上述の通りずっと鈴木のターンで、曲の本筋としては最後にあたる、2番のA''メロ、「〜かげりのない心も見えない」のところでやっとハーモニーとして合流します。
そのあとはしばらくユニゾンで合わせていますが、何回目かの「〜花なんて」で3度上ハーモニーに移行して、そのままエンディングまで行きます。
コーラス(鈴木康博/小田和正)
コーラスはサビからで、ボーカルの合間バックにひたすら「〜もう〜いらないよ♫」と繰り返しています。
アコースティックギター(鈴木康博/小田和正)
始めから入る左チャンネルが鈴木、途中で合流する右チャンネルが小田で間違いないでしょう。
鈴木はカポタスト無しのCメジャー、小田は5フレットにカポタストを装着して、Gメジャーに移調して弾いているようです。フォークのツインギターアンサンブルでは、定番と言っていい組み合わせです。
鈴木のパートはAメロのメロディを組み込んだ、教科書のようなスリーフィンガーピッキングです。そこそこ簡単そうに聞こえますが、リズムキープしながらメロを組み込んで、さらに歌うとなると意外に難しいです。
小田のギターはカポタストを使っている分、4度ほど鈴木より音域が高くなっています。それを駆使して高音の色々なパターンを絡め、随所に彩りを添えている感じです。
一方、イントロやアウトロでは鈴木の弾くメロディを邪魔しないためか、あえて1弦を鳴らさずに、音域を揃えているように聞こえます。
ごく初期にしか聴けない小田のギタープレイですが、十分に上手く、このあと滅多に弾かなくなるのが勿体無いレベルです。まあ隣にいたのが超絶ギタリストだったので、目立たないのも致し方ないことではありますが。
サビでは両者ともコードストロークで、じわじわフェイドアウトしていき、ストリングスやドラムスに飲まれてほぼ聞こえなくなります。
その後全楽器がブレイクしたところで、今度はイントロと同じスリーフィンガーでフェイドインして、静かに終了です。
エレクトリックベース(重実博)
間奏からウォーキングベースのようなラインで加わったあと、A、A’メロ部分では全音符のルート弾き、Bからルート+5度(または−4度)の分散弾きを2分音符で弾いています。
サビでもルート+5度の分散ですが、こちらも2分音符なのでゆったりした感じです。
やがてフェイドアウトして聞こえなくなりますが、最後の最後に終止音だけ加えて終了です。
ドラムス(矢沢透)
2番のAメロから入りますが、基本バスドラのみの2分打ちでBメロ部分だけ若干変化します。
サビも基本リズムはバスドラのみですが、ここから怒涛のようなフィルインが入ってきて、まさに「矢沢透オンステージ」の様相になります。
特に最後の方はギターやベースがほぼ聞こえなくなるので、オンステージ感がハンパなくなります。
フィルインのタムは1チャンネルにまとまって録られているようで、締めのタム連打がダイナミックに左から右に流れているのは、ステレオ録りではなくミックス時にパンポットで左右に走らせているようです。
その他
ストリングスはサビ頭から入りますが、初めはボリューム小さめの静かな感じで入り、途中から少しずつボリュームを上げ、最後の方ではドラムス以外をかき消すような大音量になります。
間奏ではクレジットミスで漏れたと思われるハープ、チューブラーベル、グロッケンが綺麗な和音を作っています。
このうちハープとチューブラーベルはしっかり確認できますが、グロッケンの音が鳴っているかは確証が持てません。いずれにせよたった8小節の間奏に使うには、なかなか贅沢な陣容という気がします。
別バージョン
『秋ゆく街で』ライブバージョン(1974年10月26日・中野サンプラザ)
鈴木康博 Lead Vocal, Acoustic Guitar
小田和正 Vocal, Acoustic Guitar
森理 Electric Bass
村上秀一 Drums
羽田健太郎 Electric Piano
大村憲司 Electric Guitar
スタジオ版よりも豪華なライブ版で、こちらでは本当に羽田健太郎のピアノが入っていますw
基本アレンジはスタジオ版に準じていますが、ストリングスははそれより早く、2番のBメロから入っています。これは羽田のアレンジでしょうか? 何せコンサートマスターですし、ストリングスの指揮もやってたそうですから。
サビからはその羽田のピアノと、大村のエレキギターも加わって、コンサートの締めを飾るにはふさわしい派手さになります。
ボーカルは小田のボーカルが、泣いてしまった影響か途切れがちで、2番Bメロ「〜夢のようにすぎて」からいったんユニゾンで入りますが、すぐ途切れます。
サビの頭ではスタジオ版に無かった、主旋律より下のハーモニーが付くはずだったようですが、やはり小田の声が入らず、鈴木が虚しく下のパートを1人で歌っています。
繰り返しはスタジオ版よりかなり短く、そのままエンディングの「WHAT'S GOING ON」になだれ込んで終了となります。
余談ですがこの時のメンバー羽田健太郎、村上秀一、大村憲司の3名、皆さん既に鬼籍に入られてるんですよね…時の流れを感じて、切なくなります。
スタジオライブバージョン(1978年・詳細不明)
鈴木康博 Lead Vocal, Acoustic Guitar
小田和正 Vocal, Acoustic Guitar
清水仁 Electric Bass
かなり後期でも、アンコールや幕間として歌われていたようです。多くが鈴木と小田のみ、または鈴木の独演などもあったようです。
リンクはラジオのスタジオライブで、大間が盲腸で入院、急遽4人のみで演奏を余儀なくされた時のものです。鈴木と小田のみかと思いきや、ベースも入っているので、ちゃんと5人バージョンのアレンジもあったのでしょうか? めちゃ聴いてみたい…
締めみたいなもの
ライブバージョンを探して検索していたら、大量のコピー、カバー動画が見つかりまして、それだけ愛されている曲なのだなと…改めて名曲であることを実感しました。
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