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オフコース全曲分析みたいなもの(?) ワインの匂い


楽曲について

個人的インプレッションみたいなもの

アルバム『ワインの匂い』の表題曲で、愛好者も非常に多い美しい曲です。私も初めて聴いた時に、一発で虜になりました。

全体にやわらかく静かなイメージですが、これは演奏が控えめなのももさることながら、小田のボーカルがあえて張り上げず、通常なら地声で十分歌える音域もファルセットにしているのが大きいかと思います。

転調も無く、一見仕掛けのあまりなさそうな曲ではありますが、メジャーセブンスやマイナーナインスなどの響きが複雑なコードを多用することで、優しい中にも哀愁のある曲調が作られています。

基本スペックみたいなもの

アルバム1975年12月20日リリース
『ワインの匂い』A面5曲目に収録
『SELECTION 1973-78』B面2曲目に収録

作者クレジットみたいなもの

小田和正/作詞・作曲
オフ・コース/編曲

参加ミュージシャンみたいなもの

小田和正 Lead Vocal, Chorus, Electric Piano
鈴木康博 Vocal, Chorus, Gut Guitar, Percussions
三浦啓二 Electric Bass
山本博  Drums

かなりシンプルな編成ですが、逆にこれ以上何か入れるのも野暮という感じがするぐらい、完成度が高いと思います。

曲の全体構成みたいなもの

イントロ → Aメロ1 → A'メロ1 → サビ1 → 間奏 → A'メロ2 → サビ2 → アウトロ

こちらもかなりシンプルな構成ですが、例えばサビのリフレインとか入れたらおそらく興醒め、適度な余韻のまま終わっているのが良いのです。

リズムみたいなもの

BPM=66ぐらい。数字だとめちゃ遅いように思えますが、ハイハットがコンスタントに16分音符を刻んでいるので、もったりした印象はありません。

調みたいなもの

キーは全曲通してEメジャー、特に擬似転調的なものもありません。

歌詞みたいなもの

わりと物語性のある歌詞ですが、よく見るとストーリー説明目的のト書き的な表現はほぼ無く、断片的な情景描写を羅列するだけで物語を構築しています。これは素直に凄いと思います。

別れたひとを忘れられない女性、そこに片想いする男。断片的な情景描写にも関わらず、なんとなく人物像というか、ビジュアルまで見えてくる感じです。

主役の女性は深層の令嬢が少し大人になった感じ。きっと長い黒髪に淡い色の服装が似合う、控えめな典型的なお嬢様。でも失恋の痛手からその長い髪も切ってしまった、という感じ。

そのお嬢さんに片想いする男性は、当時の小田のイメージかとw アルバムジャケット写真のような少し長めの髪で、大人ではあるけど線の細い、少年の面影を残したイメージ…

はい、個人の妄想です!おそらく違うイメージを持った方も多いと思うので、ケンカになる前にこの辺でやめておきましょうw

その傷心の彼女を慰めながら、それとなく想いを伝えるものの、彼女はやはり別れたひとが忘れられず…

この歌詞で秀逸なのは、心情そのものは一切語らずに、あくまで想い人の行動やセリフの描写、それに加えて自分の心情すら「大きく僕がついたため息」という表現だけで、物語を成立させてしまっているところにあると思います。

聴いた人は、まさに十人十色にイメージを抱き、この悲恋に思いを馳せることかと思います。

ということで私の妄想は忘れてください。

各パート

リードボーカル(小田和正)

全体に音域低めな上に、インプレッションでも書いたようにファルセットを使った、大変静かで柔らかなボーカルです。全編通してダブリングがかかっています。

ボーカルへのハーモニーパートは無いので、終始ソロで歌っています。

間奏にあたる部分はそのままスキャットで歌っていますが、けっこうな低音まで出していて、声域の広さが見て取れます。

コーラス(小田和正/鈴木康博)

間奏部分から入りますが、終始バックコーラスのみで、ハーモニーパートはありません。

低域中心のどちらかと言うとムーディーな雰囲気のコーラスですが、よく聞くとけっこう細かく音を動かしています。

2番サビからのコーラスは圧巻で、この曲の哀愁、切なさなどが一気に込み上げて来るようです。

エレクトリックピアノ(小田和正)

イントロをガットギターとユニゾンで奏でたあと、オブリガートを組み込んだコードプレイになります。

イントロはギターに合わせたやや低音の音域ですが、歌に入ってからは音域が重ならないようにか、けっこう高域で演奏しています。

この曲はストリングスやオルガンのような、持続音の楽器が一切入らないので、その分エレピやギターがせわしく動く事でサウンドを作り込んでいる感じです。

いかにもローズピアノらしい、澄んだ高音と伸びやかな余韻が、この曲の儚げなイメージを増幅しているように思えます。おそらくアコースティックピアノだと、アタック感が強すぎて、儚げな感じが削がれる気がします。

ガットギター(鈴木康博)

カポタスト無しでももちろん弾けるプレイですが、音域やコードの響きなどからみると、2カポのDメジャー、もしくは4カポのCメジャーに移調して演奏している可能性が高いかと。

コード音を織り交ぜつつ、アドリブに近い感じでかなり自由に弾いているようです。

ここで鉄弦のアコギを使わず、柔らかい響きのガットギターを使ったのは、ローズピアノの使用と合わせて、ナイス判断という感じです。おかげでイントロのフレーズも綺麗にローズピアノと馴染んでます。

エレクトリックベース(三浦啓二)

イントロでは最初に結構な高域から入って、下降リフを挟んで低域に移動という、後年に清水仁も多用している導入テクが、早くも使われていますw

基本はコード頭のルート弾きが基本ですが、コードチェンジの時に16分音符の前置音を弾くことで、ゆったり目のプレイにも関わらず、スピード感も残しています。

全編通してこの基本パターンですが、随所にリフを交えて単調にならないような工夫が見えます。特に1番A’メロではけっこうなオカズが入っていますが、かと言って変に主張はしていなく、リズムの下支えに終始しています。

ドラムス(山本博)

個人的にはこの曲のキモはドラムスにありと思っています。ドラムスとベースのしっかりしたリズム土台があるので、ピアノやギターがリズム要素を担う必要がなく、その分自由にコードやフレーズを奏でることができているのかと。

このプレイでは、なんと言ってもコンスタントに16分を刻み続けるハイハットが、とにかく印象的です。

アクセントは基本的にバスドラが付けていて、スネアはサビの部分で加わるものの、あくまでバスの補強という感じで控えめに入っています。

フィルインもさほど派手なものはなく、あくまで節の繋ぎとして控えめに入っている感じです。

その他

パーカッションはトライアングルが使われていますが、これが実に効果的です。これは鈴木のプレイです。

オフコースの曲ではここぞというとこでトライアングルを使いますが、この曲でも節の頭など、通常の曲だとシンバルが入るようなところに入っています。これが澄んだ優しい音色で、曲想を壊す事なく曲の区切り感を演出しています。

サビではアクセント部分に入っていて、こちらも効果的です。2番サビの「〜ついた」の部分は、他のパートが変則リズムの中、トライアングルだけ2拍頭に鳴っていて、リズムキープしているようです。

別バージョン

この曲も公式にはこのスタジオ版のみで、ライブバージョンなどのバリエーションは発表されていません。

スタジオライブバージョン(1976年3月21日・FM愛知/オフコースの世界)

これは1976年3月、大間が参加するのがこの約2ヶ月後なので、あくまでまだ2人でしかなかった時代のスタジオライブです。

基本2人での演奏ですが、コンガっぽいパーカッションが入っています。もちろん演者は不明です。

2人だけなので、リズムキープもピアノとギターでしなくてはいけないのですが、驚いたことにスタジオ版のフレーズをきちんと織り込みつつ演奏しています。

ギターは普通のアコギですが、この曲のためだけにガットギター持ち込むのも手間ですし、リズムキープも必要となれば鉄弦の方が音の通りも良いので、致し方ないかと思われます。

バックコーラスが再現できないので、サビの部分はレコードに無かったハモりが付けられていますが、これはこれでけっこう良いと思います。

逆に間奏スキャットのバックは、鈴木が単独でバックコーラスのフレーズを歌っていますが、これも意外と悪く無いかと。

非公式ライブ原曲バージョン(日時、会場不明) 

こちらの音源は超レア品で、時期は不明ですが、どこかのライブで披露されたプロットバージョンです。

出だしこそレコーディングされたものと同じですが、途中からまるで別の曲になってしまいます。これはこれでアリかもとは思いますが、やはり完成バージョンに比べるとまとまりが無く、このままでは「名曲」にはなり得なかったかと思います。

とは言え、こんなふうにライブで披露できるまで出来上がっていたものを、よくここまで大胆に改造できたなとも思います。

あと、曲こそ大胆に変更されていますが、歌詞の内容はほぼ完成版に近いのも、意外と言えば意外な感じがします。

締めみたいなもの

ということで、個人的に1、2を争う好きな曲です。もっとも私の場合、1、2を争う曲が2曲で収まらないという大いなる矛盾を抱えているので、おそらく今後も同じようなこと言うかと思います。そんな時は笑ってそっ閉じしていただけると大変ありがたいです。

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