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オフコース全曲分析みたいなもの(?) 秋の気配


楽曲について

個人的インプレッションみたいなもの

オフコース・小田和正ファンには説明不要の名曲です。

ですが意外にも、リリース当時はオリコン100位圏内にすら入らなかったそうです。とは言えその1ヶ月後には『JUNKTION』がリリースされて、こちらはアルバムチャート21位まで行っているので、当時のファンはアルバムメインで聴いていたようですね。

個人的にはもちろん大好きな作品で、小田曲、ひいてはオフコース曲の中でもかなり上位に来ます。

この時期のオフコースとしても、かなりアコースティック寄りな作品ではありますが、フォークっぽさはほぼ無くて、上質なポップソングとして仕上がっています。

個人的にはこの時期の、アコースティックとエレクトリックのバランスがとれたサウンド傾向が一番好きで、その中でもこの曲は集大成のように思います。

基本スペックみたいなもの

シングル1977年8月5日リリース
『秋の気配/恋人よ そのままで』A面に収録
『JUNKTION』A面5曲目に収録
『SELECTION 1973-78』B面7曲目に収録

作者クレジットみたいなもの

小田和正/作詞・作曲・ストリングス編曲
オフコース/編曲

参加ミュージシャンみたいなもの

小田和正  Lead Vocal, Chorus, Electric Piano
鈴木康博  Vocal, Chorus, Acoustic Guitar, Gut Guitar, Electric Guitar
清水仁   Electric Bass
大間ジロー Drums, Percussions

なんと!この曲には松尾が参加してません!

曲の全体構成みたいなもの

イントロ → Aメロ1 → A'メロ1 → Bメロ1 → サビ1 → 間奏 → Aメロ2 → A'メロ2→ Bメロ2 → サビ2 → Cメロ → サビ’3 → アウトロ

「〜目を閉じて」の部分をBメロとし、「〜ああ嘘でもいいから」のブリッジ部分をCメロに定義しました。
3番のサビは1番2番と繰り返しのパターンが変わっているため、ダッシュを付けています。

リズムみたいなもの

BPM=120ちょっと。サビとAメロではアクセントの位置が違い、サビでは2拍目と4拍目、Aメロは3拍目ということで、実質サビはAメロの倍のテンポになります。Aメロは実質BPM=60ちょっとということですね。

調みたいなもの

全編EマイナーまたはGメジャーで転調無し…と言いたいところですが、実はイントロの冒頭2小節、ガットギターのコードプレイだけ、Eメジャー調性になっています。

歌詞みたいなもの

小田の歌詞にしては、比較的具体的な情景描写がある歌詞です。

その一方、実はなかなかに鬼畜な内容を、綺麗な言い回しの中に潜ませている、小田ならではの傾向もよく現れています。

いわゆる相手を「振る」内容になっていて、平たく言ってしまえば「別れたいんだけど、どうやって切り出せば良いか悩んでる」というのが主題です。

場所は「港の見える丘公園」と推定されていますが、公園自体にいるわけではなく、カフェかレストランか、あるいは車の中か明言されていませんが、その場所が眺められる室内というのが舞台です。

別れを切り出したい男と、その空気を察しながらも賢明に喋るなりして場を繕う女。「〜あなたの声が小さくなる」というのは、女の喋っていることが耳に入らなくなっているのか?あるいはずっと黙っていて、心ここにあらずな男の態度に、女の心が折れて喋り声がトーンダウンしているのか?どちらとも取れますが、どっちみち末期です。

女はもう察しているから「〜あのうただけは 他の誰にも うたわないでね ただそれだけ」と、十分覚悟したうえでの精一杯の台詞…ぶっちゃけかわいそうです。

なのに「〜嘘でもいいから微笑むふりをして」とか、個人的には結構鬼畜だなあと思います。

ただやっぱり言葉の選び方が絶妙なんですよね。「〜たそがれは風を止めて〜」あたりの情景描写は、本当に美しいと思います。そのもとで行われている修羅場に目を瞑ればw

この曲に限らず、小田作品の歌詞は深堀して行くと、けっこう違った印象になってしまうので、あまり邪推せずに雰囲気重視で聴くのが幸せかもと思いました。

各パート

リードボーカル(小田和正)

全編ダブリングのかかったボーカルになっています。曲想に合わせてか、大変穏やかなイメージです。

特にCメロの「〜ああ嘘でもいいから」のあたりでは、比較的淡々としたボーカルが特徴の小田にしては、なかなかに情感がこもっている感じがします。

コーラス(小田和正/鈴木康博)

主にボーカルのハーモニーパートと、バックコーラスがそれぞれ左右に振り分けられて入っています。ハーモニーパートは中央寄り、バックコーラスはそれよりやや外側に振られていますが、わずかな差なので同時に鳴るとかなりかぶって聴こえます。

ハーモニーパートはサビ以外にも、Bメロ2番の「〜大いなる河のように」のところにも入っています。ここのハーモニーは大変効果的で、サビへ向けての期待感が高まります。

サビのハーモニーは部分ごとにミックスレベルが変わっている感じで、1番サビでは均等に、2番サビでは低音パート、リフレインでは高音パートが強調されている感じです。

バックコーラスはBメロ部分から入ってきて、ハーモニーとは被らずに入れていますが、Cメロで僅かに被ったあと、2回目のリフレインではハーモニーのバックに入って、大変分厚いコーラスワークになっています。

あと、目立たないですがBメロでは、バックコーラスやハーモニーパートとは別に、かなり高音の単音ロングトーンコーラスが入っていて、これが良い感じの隠し味になっています。

ガットギター/アコースティックギター(鈴木康博)

ガットギターが左、アコースティックギターが右に振られていて、全編通しで見事なアンサンブルになっています。

ガットギターはまさにこの曲のキモと言うべき存在感で、まず出だしのEM7コードが鳴った時点で、ああ『秋の気配』だとわかるぐらいです。プレイ内容からして、全編フィンガーピッキングかと推測されます。

アコースティックギターはガットギターのサポート的に入ってはいますが、違うフレーズを奏でるのはもちろん、あえて同じフレーズを弾いて別種ギター同士のユニゾンを聴かせるなど、考え抜かれたアンサンブルになっています。こちらもフィンガーピッキングのようです。

この2本のアンサンブルは、イントロ以外でも間奏やアウトロでのアルペジオとストロークのコードワークで存在感を見せています。

おそらく松尾が参加せず、ギターパートをすべて鈴木が弾いたのも、この完成度を突き詰めるためだったのかと思います。この『JUNKTION』から後の5人メンバーが揃ったとはいえ、サウンドの主導権はあくまで小田と鈴木の2人で、まだ他の3人はサポートの域を出ていなかったというのを象徴している感じがします。

エレクトリックギター(鈴木康博)

1番のA'メロからセンターチャンネルで、ボーカルと重なった位置で鳴っています。

バイオリン奏法とボトルネック奏法を併用していることもあって、あまりギターっぽく聞こえないのがツボです。もっともミックスレベルもさほど高くないので、元々目立たせるつもりもないかと思われます。

とはいえ、このフワフワした掴みどころのないサウンドは、Aメロのゆったりしたリズムに、ちょっとした流動感というか滑らかさを加えている感じで、個人的には大変好きなプレイです。

エレクトリックピアノ(小田和正)

キーボードはローズ系のエレキピアノのみのようです。

この曲は紛れもないギター主体の曲で、コード音については2本のギターがこれでもかと鳴らしているので、エレピはギターの音域と被らない、高音域でのプレイが主体になっています。

全体的にあまり目立たないプレイに終始していますが、Cメロやアウトロのあたりでは、ローズの澄んだ音で印象的なコードやフレーズを奏でています。

エレクトリックベース(清水仁)

本人が「あのソロでオフコースの一員になれたと思った(意訳)」と宣った、有名な間奏部分のソロが注目されがちですが、全体を見てもなかなかに工夫されたプレイになっていると思います。

Aメロ部分ではひたすらルート弾きで、ギター群の低音サポートに徹していますが、サビではシンコペーションの効いたプレイで、スピード感の変化を強調しています。

間奏のソロも情感があって良いのですが、Bメロの「〜さかのぼる ほんのひととき」のC#m7♭5という不安定なコードの部分で、これまた不安定な半音下降フレーズを奏でています。このフレーズが本当に時を遡っているような感覚で、個人的にはこの曲でのベストフレーズだと思います。

ドラムス(大間ジロー)

1番A’メロから入ってきますが、2番まではサビも含めて、徹底して抑えたプレイになっています。スネアはひたすらリムショット、バスドラはアクセント部分のみで、あえて小節頭に入れないことで、リズムが重くなるのを避けているようです。

シンバル類も徹底してハイハットのみ、たまに入るタムもローやフロアメインで、しかもかなり抑えた叩き方になっています。

それでもリムショットのパターンはかなり多彩で、1,3拍目の頭だったり、1拍目の表ウラ連打だったり、サビでは4拍打ちと、限られた中で変化を付けています。

そしてCメロからは、今まで抑えていた分を解放するかのように、スネア、タム、シンバル類が徐々に加わって、サビリフレインではガッツリ8ビートを叩き、盛り上がりを最高潮に演出しています。

パーカッション(大間ジロー)

聴き取れる範囲では、トライアングルと、おそらく木魚が入っているようです。

中でもトライアングルはかなり重要です。イントロでの澄んだ音がまずは印象深いですが、A’メロ以降、オープンクローズ織り交ぜながら、細かいリズムを刻んでいます。クローズの「チチチチ」と刻むリズムに、時々オープンの「チーン」という音が混ざるプレイは、この曲の隠れた肝かと思います。

木魚は目立ちにくいですが、やはりA’メロ以降、コンスタントに4拍を刻んでいて、リズムの下支えを担っています。

ストリングス

ストリングスでやはり印象深いのはイントロのフレーズですが、歌に絡む部分でもなかなか効果的に入っています。

特に2番のAメロ部分のバックや、Cメロ部分では、サビのリフレインに向けてじわじわ盛り上げていく演出に貢献していて、個人的には大変好きなアレンジです。

別バージョン

リミックスバージョン

私の聴いた限りですが、オリジナル以外に2種類のリミックスバージョンが確認できます。

ひとつは『SELECTION 1973-78』に収録されていたバージョン、もうひとつが『i(ai) Off Course All Time Best』に収録されているバージョンで、こちらの動画は『i(ai) Off Course All Time Best』バージョンになります。いずれもテイク自体は同じもので、ミックスだけが違っているようです。

『SELECTION 1973-78』バージョンは、『JUNKTION』バージョンに比べて、ガットギター、アコギのバランスが大きく、やや中央に寄せられている感じです。またストリングスはかなり大きめになっているほか、他のパートのバランスや定位も若干違っているようです。最後のフェイドアウトは若干長くなっています。

『i(ai) Off Course All Time Best』バージョンは、『SELECTION 1973-78』バージョンほどではありませんが、やはりギターのバランスがやや大きめなのに加え、エコーが強めにかかっています。ストリングスの音量は『JUNKTION』と『SELECTION 1973-78』の中間ぐらいの感じです。

おそらく後年のリミックスなのでしょうね。他の楽器類も粒立ちが良く、ひとつひとつの音が鮮明に聴こえる感じです。

非公式ライブバージョン(1977年・スタジオライブ・詳細不明)

小田和正  Lead Vocal, Electric Piano
鈴木康博  Chorus, Acoustic Guitar
松尾一彦  Chorus, Acoustic Guitar
清水仁   Chorus, Electric Bass
大間ジロー Drums, Percussions
(推測)

鈴木、松尾ともにアコギで、出だしはおそらく鈴木かと思われます。イントロのストリングスのパートはエレピで代用していますが、ショボく聴こえないのはさすがです。

大間はドラム以外に、イントロやアウトロでトライアングルを鳴らしていて、制限の多いライブでも印象的な音を部分的にでも鳴らすことで、レコードのイメージを再現しているのは流石です。

コーラスは鈴木、松尾、清水でこなしていますが、1番サビのハーモニーは鈴木のみ、2番以降は松尾と清水を加えて、徐々に盛り上がっていく流れを演出しています。

締めみたいなもの

前回のアップからずいぶん間が空いてしまいました…どうしてもクール頭は忙しくなってしまって、じっくり聴き込む時間が取れなかったもので…

ともあれこれで『SELECTION 1973-78』は完走しました。思った以上にハードでしたが、なかなか楽しかったし、これで続ける自信もちょっとはついたかなと思います。

このあとは当初予定通り『Three and Two』でいこうと思います。そのあとはやはり好きな順で行くのがモチベ維持には良いと思ったので、『JUNKTION』『ワインの匂い』といった好きなアルバム優先で進めようかと。

ペースは不安定ですが、よろしければ引き続きお付き合いいただけるとありがたいです。


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