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死に至る病①

tasteマン


父が死んだ。あの頑健な身体を持った父が死んだ。
67歳という若さだったのに。急性骨髄性白血病という血液の癌として知られている病。寝耳に水の驚きだった。
「疲れやすい。」「集中力が長続きしない。」「身体がだるい」およそ日頃の父から発せられる言葉とは思えない元気のない声で言う。
母と一緒に大きな総合病院に駆けつけ、父の診断を受ける。
血液検査の後、先生曰く、「これは急性骨髄性白血病だ。治療方法はいくつかある。当面、抗がん剤を使う。癌化した白血球をやっつけて正常な白血球に戻す。第一段階はその治療をする。普通の体力を持った人なら、元気になる。寛解といって患者は正常な体力と気力を取り戻す。しかし、一度癌に勝つことはできても癌化した白血球はある期間過ぎると、復活して、今度は治療に使った抗癌剤よりも強くなって生き返る。復活した癌化白血球をやっつけるには抗癌剤はより強いものが必要になる。」言うまでもなく、抗癌剤は癌細胞をやっつけると同時に正常な細胞も攻撃して殺してしまう。毒をもって毒を制す。抗癌剤は猛毒以外の何物でもない。
先生のお話を聞いて、母と私はどん底に突き落とされた。雨がしとどに降っていた。母の眼から大粒の涙が落ちる。私の顔からも涙が止めどなく流れた。私たち母子は、世の中から見捨てられ、二人手に手を取って暗い道を走っていく。

抗がん剤の化学療法によって、父は一旦は元気になった。寛解を迎えて正常な白血球が増えた。しかし、先生の言う通り、やがて、数か月したら癌化した白血球が復活して強くなって再び父の身体を攻撃するようになる。そうなる前に、私らは何ができるか。必死で情報を集め、癌と戦う「戦さ」を試みた。素人特有の宛もない「模索」を試みた。旧来から言われている「丸山ワクチン」の効果が良いとか。ゲルマニウムの服用が良いとか。特に、ゲルマニウムについては、血液内に酸素を齎し、癌細胞をやっつける力があると教えられ、それを飲んで命を永らえた著名な国会議員に直接紹介状を書いてもらい購入した。時間はない。父の病が進行する前に急いで対策しなくてはならない。思考錯誤して一か月ぐらいして、「癌はウイルスだそうだ。だからワクチンによる治療が効く」という話を耳にした。ならば、ワクチンを作ってもらおう。さっそくそのH病院に行って検査・ワクチン作りの依頼をした。ところが、いつまで待ってもワクチンができたという知らせは来なかった。ワクチンはすぐできると信じて待っていたけれど、父が死んで何か月もしてから、やっと、「やはりウイルスでした。やっとできました」とH病院から返事が来た。
私は、H病院から得た本を繰り返し読んで、その本を正しいと信じて「ウイルス」についてかなり勉強した。

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