古が舞台の斬新なミステリ小説

 中華コンテンツが日本の中で存在感が高まってきている中で、小説にもこれから中華の風が吹き始めるのかもしれない。

 中国の古典(詩経、楚辞、易経、春秋左氏伝、礼記、尚書など)を登場人物たちが度々引用しながら会話をしているのと、その解釈をめぐっての議論が多く読むのに時間がかかる小説ではあった。

 また古代中国が舞台なので、その時代の文化や風俗、政治情勢や宗教観死生観など理解しながら読んでいかないとちんぷんかんぷんになる。

 けれど、そういった土台の違いによって生まれる謎解き要素は、今流行りの特殊設定ミステリに通じるものがあって楽しむことができた。

 個人的な感想だけれど、犯行を行うに当たって怪しい人物はアリバイや殺害状況から絞りやすくはあったのだけれど、なんで殺したのかは思い至ることができなかった。

 そういった意味で、パズラーミステリが好きな人には向かないが、ストーリーにドラマ性がありその部分が本作最大の謎になっているため、後半の謎解きパートはストーリーに身を任せながら夢中で読めた。

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