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おんがくをかくかくをかく肆

ジャズにはまったく詳しくない。
なのに聴きたいときがある。

眠るとき。
あまり普通ではない家族トラブルを全部引き受けるような日々が長いので、
自覚している睡眠障害をなんとかしよう、質をあげようと
ホワイトノイズだとか自然音だとかを試してみたがダメだった。
あれは個人差がなかなかあると思う。
 ヴォーカルが入っているのも、眠るときは私にはダメらしい。聴いてしまうから。
良くある宇宙っぽいのはさらにダメだった。

ここかなぁ、と落ち着いたのがジャズ。
ブルース好きではあるのだが、それも聴いちゃうから眠れない。
ジャズフリークの方々には大変失礼とは思うのだが、ジャズには眠るとき助けていただいている。

聴いているうちに、自分のなかで振り分けが出来てきた。

眠るときは サックスかピアノ。
朝は、ギター。

華やかではなく、スモーキーですこし路地裏の匂いがするような。
バーで言えば
高層ビルからの俯瞰すぎる絶景夜景ではなくて、
二階か三階くらいの高さの店で、
車通りも深夜過ぎにまばらになって、あまり賑やかではない通りの風景。

このイメージを
私はまた想像→実現へと持ち込みたくなって、
イメージ通りの風景を探して、バー巡りをしてしまってもいる。
おいおい、眠りはどうした、かもしれないけど
眠るために聴いていたジャズのイメージは、ひとり酒のイメージでもあるのだ。
SNSで見るのは、プロポーズやクリスマスデートにぜひ!みたいな
夜景ー!って夜景の店がやっぱり多くて、そして殆どが東京、横浜、大阪、神戸という大都会。
それも素敵なのはわかるんだけどね、違うんだ
オーセンティックバーじゃなくていいから、
看板が古くてすこしチリチリ鳴るような、深夜には客も殆ど居ないような、客待ちのタクシーのハザードが窓の外でちかちか光るような、
時々酔っ払いたちの大声でハッとするような、もちろん葉巻きなどにこだわらず、紙タバコを敬遠しない店。昨今諸事情でダメな店もあるからしかたないけどね。
何事に於いても『もう自分でつくれ!』と 言われるほど具体的条件を並べすぎる私なので、これが細かすぎることは承知している。
それにこの条件だと現実的に店は道楽以外では成り立たない。
でも、たまに
あっ、ここかも?という店には出会うこともある。私の求めるイメージがマイノリティ過ぎて情報は少ないため、足で探すしかない。

…基本的には、バーに限らずひっそり居酒屋とか知らない店にひとり飛び込むのも趣味なので むしろそっちなのだが。

水戸に、近い店がある。
二年前に見つけた。ただし、見た目は内装も含めバー、なのに タイ好きのオーナーの意向で 
ドアを開けたらタイ、だ。匂いが。
わかっていたので、覚悟は出来ていたが
その覚悟以上にタイ!だった。
BGMは薄くジャズ、だった。

しかし、窓際の席は通りがしっかり見えて、羅列した条件もいくつかクリアする。

眺めながら。嗚呼タイ、と匂いに引き戻され、
また外を見て カウンターに視線を戻してタイ。
風景、タイ、風景、タイ。

マスターはとても『いい人感』溢れていて、酒もちゃんと旨い。
ツマミは……パクチー、魚醤、タイ!タイー!!!

好きな方はどうぞ、水戸駅北口でお探しください。タイランチもやってるみたいです、ハドル バーさん。

さて睡眠だが。
家飲みはしない。ひとりならするけど、私は家族の前で飲むのが好きではない。できれば外でもひとりで飲んで、ひとりの場所に帰りたいから 格安宿を取って飲む。月にいちどだけの私のささやかなプライベートだ。
そのとき、たとえ理想的イメージの店を見つけていたとしても、
私はホテルの部屋でスマホからジャズを流す。

翌日、月イチで一番ちゃんと眠った朝は
軽いギターを聴いて準備をして、

車のエンジンをかけたら

ゴリッとロックが鳴り始める。
 
 いつもありがとう、ジャズ。
いつもありがとう、程よくほっといてくれる大好きな店たち。
いつもありがとう、ゴリッとした朝。

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