湯船のとりこ

 この1か月、毎日湯船につかるようにしている。
 アゴまで沈んで、180数える。

 学生の頃、わたしは長湯が好きだった。

 しかし勤め人になってからというもの、シャワーで済ませることが多くなっていた。
 1年のうち、湯船につかるのは数回である。

 シャワー生活における不都合はなかった。
 体も温まるし、さっぱりもする。

 だけどわたしは、再び湯船のとりこになった。

 きっかけは、軽い痔になったとき。
 なんとなく湯につかりたくなって、久しぶりに湯船に入った。

 極楽である。

 お腹の底から温かくなって、体じゅうが緩む。
 全身が温かさに包まれると、頭の中がからっぽになる。

 「幸せだなぁ」

 無意識に、声が出るのであった。

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