<構造コラム> 少し深堀した断面係数の話

断面係数Zとは、断面二次モーメントIを中立軸位置からの高さyで除したものである。
しかしながら、デザインデータブックなどで一般的に示される断面係数だけでは、ちょっと物足りない。
なので、すこし深掘りした断面係数を考えていきたいと思う。

デザインデータブックの断面係数は、何が物足りないのか

ずばり、「最外縁に対する断面係数しか示されていない」ことである。

そもそも、断面係数は、何に使うのか。
鋼部材の設計という観点で言えば、断面係数に材料強度を乗ずれば曲げ耐力を求められる。
逆に、曲げモーメントを断面係数で徐すれば曲げ応力を求められる。
曲げ耐力で設計するのか、それとも曲げ応力で設計するのかは意見の分かれるところであるが、どちらにせよ断面係数とは、曲げによる断面の応答に関するパラメータであることがわかる。
例えば、H鋼の曲げの設計は、確かにフランジで行う。
なので、フランジ最外縁の応力が求めることが必要となり、それならばデザインデータブックに記載の断面係数で事足りる。
しかし、H鋼の曲げの設計は、フランジだけでなく、腹板もある。

深掘り① 腹板の付け根位置での断面係数も求めておく

なので、腹板の付け根位置での断面係数も求めておこう。
求め方は、中立軸位置からの高さyを腹板の付け根位置にするだけ。
とっても簡単であるが、デザインデータブックに載っている数値のみを使っていると案外すんなりわからないかもしれない。

腹板は、せん断で設計が決まる場合もあるが、曲げ応力もそれなりに大きいので、合成応力の照査がほぼ必須である。
つまり設計では必ず腹板の曲げ応力が必要になる。
なので、あらかじめ準備しておいた方がよいだろう。
まあ、既往のエクセルを使うと、最初から組み込まれているかもしれないが。
ちなみに、腹板が幅厚比とかで決まっている場合は、応力が余るケースもあるので、そういうときは不要かもしれない。

深掘り② フランジの板厚中心位置での断面係数も求めておく

本項は、提案的な内容である。
通常の鋼部材の設計では、フランジの最外縁の応力で曲げの設計を行う。
一方で、RC部材の曲げ降伏耐力の算定においては、引張鉄筋は重心位置で降伏を判定する。
つまり、鉄筋の最外縁ではないのだ。
ここに、鋼部材とRC部材の考え方に大きな違いがあることが分かる。
個人的な意見としては、鋼部材もRC部材の設計と同じでいいのではないかと考えている。
なぜならば、現在の設計方法における鋼部材の曲げの最大耐力は、降伏モーメントであることがほとんどなためである。
実際の最大耐力は、全塑性モーメントであるはずなので、最外縁の降伏にはこだわらなくてもよいのではと考えている。
以上を踏まえて、フランジの板厚中心位置で曲げの設計をする未来に賭けて、この断面係数を求めておくのはいかがか。

なお、本記事では、座屈のことを全然気にしていない。

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