視点の変え方

保育園に勤務していることもあって、子どもの発達に関する悩み・心配に関する相談を受けることが多い。保護者や、ともに働く保育士の仲間からも。

「〇〇君(1歳男児)は、ずっと丸いものばかり集めてきて投げたり回したりしているんです」「丸いブロックをちょっと隠してみたりもしたんですが、やっぱり丸いものを欲しがります」
こだわりの強い子がいると、その行動には何か問題があるのではないか、と心配する。

脳は注目したものしかみない。

「きちんと、形を分別して、集中して遊べるなんて素敵だね」と答えると、「本当にそれでいいんですか?」といわんばかりの意外な表情。
「本人は満足したら、やめるだろうし、やりたいことをやりきったら、遊びや興味の幅が広がって展開するだろうから、その種まきだけしておけばいいんじゃない?」

そういう私も、息子が2~3歳のとき、水遊びを怖がる様子に、不安や焦りの感情が出て、「水泳を習わせようかな」と思ったし、保育園で年長の子どもたちが鉄棒で逆上がりをする様子を目の当たりにして、「うちの子は苦労するだろうから、早めに練習させようかな」なんて、気になる姿に着目して、弱点克服できる環境を整えることが、親が子どもにしてあげる、すべきことだと思っていた。
誘導されて伸びることもあるけれど、それがその子の特性とはいえない。

子どもの発達は、その時期に必要な経験をじっくりと積み重ねることで、次の発達への確かな土台ができる。
自分がやりたいことを、自分で選んで(決めて)最後までやりきる経験。
そのために、大人がじっくりと待ってあげることも大事だ。
幸い子どもの通っていた保育園では、ひとりひとりの個性や発達にあわせて、本当にじっくりじっくり、子どもたちに真剣に向き合い、育ててくれた。
「だんだんでええで」少しずつ、でもじっくりと確実に、育っていく子どもたち。そして、大人も親として育っていく。
私も、じっくりじっくり、子どもへの向き合い方や子育ての軸みたいなものを、獲得していったように思う。視点が変わった。

自分自身の経験を振り返っても、ひとりだけで頑張っていても視点を変えることは難しい。その頑張りを認めて、子育てやこころの鎧をふわっと外してくれるような、誰かの力がとても大切だ。
もしかしたら、私もそんな誰かになれるように、子どもたちやお母さんの心が少しでも軽くなったらいいな、そんな気持ちでふわりふわりと毎日誰かと話している。

子どもが大好きなブランコやすべり台、砂遊びなどには動く感覚や触れる感覚など多くの感覚情報が含まれており、子どもはその情報を必要としているからこそ、その遊びを繰り返すとも考えられる。同じような遊びを繰り返す場合、その遊びにどのような意味が隠されているのか考え、遊びの展開を支援する必要がある。
・遊びに夢中になっているときはそっと見守る
・子どもの様子を観察し、子どもが欲している感覚がわかれば、その感覚と  
 同じような感覚を味わえる違った遊びを教えてあげる。
 (砂遊びが好き→お米とぎなどのお手伝い遊びをしてみる)
・遊びの誘い方の工夫・・・まずはこちらが子どもの遊びに入り、子どもとともに遊びを行うことから始め、そこから少しずつ遊びを広げていくようにする。
・子どもたちの脳は、今ある能力でできることを繰り返すより、能力より少し上の課題を提示され、その課題を達成できた時が最も楽しく感じられるようにできている。

感覚統合Q&A  [監修]土田玲子 協同医書出版社


子どもに将来、そうあってほしいと願う姿があれば、まず自分自身がそう生きること。
子どもを変えたいと思えば、自分の行動を見直してみる。
悩むよりもまず行動。

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