それは誰の希望なのか?~5歳長女のやけど記録~ #148

電気ケトルの熱湯で、左下腿と腰のあたりに火傷を負った5歳年長の長女。
朝、登園前のいつもの慌ただしい日常が、少しの油断で一瞬にして、事故、非常事態に繋がった。
起きてしまったことは仕方がない。
 
その日は夫が仕事を休み、看護と受診を担当することになった。
受診後、「2週間で治る」と報告が入り、ほっとする。
 
「そうか、全治2週間ね」と心の中でつぶやき、ニュアンスの違いを感じた。「全治」をつけた瞬間、大げさな感じがして少し緊張するけれど、「2週間もあれば治る」だと深刻さがあまりなくて、その程度で済んでよかった、と思える。そう思うのは私だけだろうか?言い方の問題?
やはり言葉のちから、言い方って大事だと思う。
いつだって、相手が不安に感じないような言い方を心がけたいものだ。

実際に、彼女に処方されたのはアズノールだけだった。
それくらいで済んでよかった。
 
下着やズボンが傷口に触れ、締め付けることのないように、小2の兄のボクサーパンツをはかせ、ワンピースを着せた。娘にとってワンピースはお休みの日のちょっと気分が上がる洋服だ。いつもはTシャツと短パンで登園する娘も、「保育園だけど、ワンピースを着てもいい」という特別対応に、お姫様気分でご機嫌だ。
園でも皆が心配してくれて、気遣い手助けしてくれるので、ご満悦だったそうだ。
 
とはいえ、当面は毎日のガーゼ交換が必要で、入浴や水遊び、泥遊びは我慢が必要だ。
 
保育園は、水遊びや泥遊びを日常的に行っているうえに、年長お泊り(山でテントをはってのキャンプ)の日が近づいていた。
 
そうだ、キャンプ前だった。
連日、山に焚き火用の木を拾いに行って、のこぎりで切り、夜になると動物がやってくるので動物対策の案山子をつくったりと、ひとつひとつ準備している。
乳児期から自然の中で思い切り遊んで暮らしてきた子どもたちが、保育園生活の集大成である年長期の大きな営みのひとつのキャンプだ。
 
そのキャンプの目玉のひとつにドラム缶風呂がある。
子ども達が入園する前、保育園のブログをみたり、園見学に行った時に、乳児期から年長期にかけての育ちを垣間見て、感動して泣きそうになったことを想いだした。こんな環境で過ごせたらいいな、と思った。
いいなと思った環境のひとつにドラム缶風呂があった。もちろん日常的に使うのではなく、山でキャンプするときのお楽しみだ。

私はもうずいぶん前から、自分の子どもをこの昭和感たっぷりなドラム缶風呂に入れてあげたい!と思っていた。
つまり、私は娘にドラム缶風呂を経験させてあげたくて、保育園を選んだといっても過言ではない!
 
憧れのドラム缶風呂まで、あと〇日、と指折り数えるところまでやってきたのに、火傷で入れないね。。。という現実に気がついた。

「ドラム缶風呂入られへんねぇ」

思わず、言ってしまった。
“しまった” 娘の前でわざわざ言う必要ないよね。
 
ところが、娘はなんてことないよ、という明るい表情で間髪入れずに
「お風呂よりもっと楽しいこといっぱいあるからいいねん。火の神様呼ぶ方が楽しいもん」と言い切った。
彼女はキャンプファイアーをすることにワクワクしていたのだ。
 
火傷をした後に、キャンプファイヤーや火起こしを楽しみにしているだなんて、熱湯の熱さと、炎の熱さがいまひとつ繋がっていないのかもしれない。

ともかく、娘が「ドラム缶風呂に入りたいのに入れない」のではなく、
母である私が、娘を「ドラム缶風呂に入れさせてあげたいのにそれが叶わない」という状況だというほうが的確だ。
つまり、これは私の問題だ。

子育てをする上で、こういうことはよくある。
勉強をしてほしい、中学受験をしてほしい、せめて平均点をとってほしい、学校には行ってほしい、、、家庭によって抱える悩みは、さまざまだけれど、子どもがどうありたいかではなく、大人が子どもにどうあってほしいか、という尺度でものごとを考えてしまいがちだ。
「子どもがどうあれば幸せか」をいつだって最優先したいと思う。

理屈ではわかっていても、やはり私も、子どもの考えを無視した大人目線での思考をしてしまうことがある。
理屈を知っているからこそ、「これは本当に彼女の問題だろうか」と立ち止まって自分の言動を冷静に振り返れたのかな、とも思う。
親の価値観や子どもへの期待、希望を子どもに押し付けないようにしなくては、と改めて思った。

長女の火傷を通して、いろいろな学びや気づきをもらっている。
もちろん、事故は起きない、起こさないが理想だけれど、何かあったときには最大限そこから学び次に繋げていくしかない。
本当に、今回はそういうことがすごく多くて、私たち母娘にとって必然だったのかなとも思う。

いよいよキャンプ本番を迎えるので、キャンプ後にまた所感を書こうと思う。

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